審判だけが知っているBACK NUMBER
<私が裁いた名勝負>重圧をかけ続け、逆転の土台を作っていた。
text by
布施鋼治Koji Fuse
posted2021/04/13 08:00
沖山功さん
語り継がれる名勝負をその演者のひとり、審判が振り返る。彼しか知らない新たな景色が見えてくる。
2013年 レスリング全日本選抜選手権55kg級決勝
吉田沙保里 6対5 村田夏南子
6月16日/代々木競技場第2体育館
国内二大大会のひとつで激突した世界王者と次代のホープ。序盤から攻勢に出た村田(右)がリードを奪うと、ペースを渡すことなく時間が経過。だが残り13秒でついに逆転、吉田が勝利をつかんだ。村田は翌年に階級を上げ、やがて総合格闘技に転向。吉田はリオでもメダルを獲った。
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吉田沙保里選手が村田夏南子選手と競り合った末に試合終了間際に逆転勝ちした、2013年の全日本選抜選手権決勝は、主審を務めた私にとって記憶に残る一戦です。40歳で国際審判の資格をとっているんですが、その6年後に裁いた大一番ですね。