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アントラーズ復帰前、内田篤人に小笠原満男から届いた一通のメール…「たいしたことねぇなぁ」の初対面から12年後の変化とは
text by
池田博一Hirokazu Ikeda
photograph byToru Hiraiwa
posted2021/04/02 11:01
内田がアントラーズに加入した2006年当時の思い出を振り返った2人。「小笠原満男のインパクトが強くない、わけないでしょう!」(内田)
――出会いを経て、ともにプレーすることになりますが、小笠原TAは内田選手のプレーを見ての印象はどうでしたか?
小笠原 “たいしたことねぇなぁ”と思った。まあ、数々の歴代の選手たちを見てきたからさ(笑)。何か“これ”という光るものがあって、すごいプレーをした印象はない。かといって、下手だったわけではないけれど、そこまでインパクトがある印象ではなかったね。正直、申し訳ないけど(笑)。
内田 高卒に求めすぎでしょ(ボソッ)。
小笠原 まあ、みんな最初はそんなもんだけどね。でも、慎三(興梠慎三、現浦和)とかは一発のスピード、大迫(勇也、現ブレーメン)だったらポストプレーがあったからさ。それぞれ、こんなことができるんだというのがあったけど、何かこれがすごいなっていうものは感じなかったかな。内田からは残念ながら……(笑)。
内田 そうなんですよ……ゴールデンエイジがいて、周りのみんながすごかったから。練習参加で他のクラブもいくつか見たけれど、レベルが全然違った。当時は「みんな、うまいなあ」って思っていました。でも、僕自身はパス回しとか下手だったけど、うまい選手のところに入っていこうと思っていました。本さん(本山雅志)とか野沢(拓也)さんがパス回しをしているところに邪魔して入っていって。ロングキックでは青木(剛)さんと組んだり。
図々しくて邪魔だったかなと思うけど、とにかくうまい人と一緒にやるようにしていました。正直、嫌ですよ、緊張するし。どう思われているのか分からないけれど、同世代と組むよりはうまい人と組もうと思っていたかな。
――失敗の怖さよりも、上のレベルを体感したいと意識していたんですね。
内田 せっかくアントラーズに入ったわけだし、テレビで見ていた人と一緒にボールを蹴れるなんて、ちょー幸せなこと。それがアントラーズに来た意味でもありました。めちゃめちゃ遊ばれていましたけどね(笑)。ボール回しでは、俺と(田代)有三さんしか中に入らないんだもん。
小笠原 下手なやつは中にいるよね(笑)。ボール回しで基礎技術はだいたい分かる。でも篤人も言っていたけれど、上から吸収しようという姿勢はすごく感じたね。ピッチ内でもそうだけど、ピッチ外でもよく有三とか本とか(中田)浩二と一緒にいたり。いいことも悪いことも、上と一緒にいて、観察して学び吸収しようとしていたイメージがある。同級生や近い年代といたほうが楽なんだろうけど、いろんなものを見たり吸収したりという意識を持っている人間なんだなと思っていたかな。
内田 いろんなものを吸収するというよりも、とにかくみんなについていかないとまずいと思っていました。試合に出させてもらっていたし、こういう人たちのレベルに早く追いつかないといけないんだと思っていました。まず、自分はその場所にいないといけないと思っていたんです。
――ピッチ内外含めていろんな場面で必死だったんですね。
内田 そうそう。先輩たちも嫌な顔をしないし、「おいで」って言ってくれて、“来るもの拒まず”だったから。みんな優しかったんですよ……小笠原以外は。
小笠原 (笑)。取材中だぞ……。
「じゃあ、帰ってこい」
――2018年、アントラーズに復帰しました。お互いに連絡は取り合ったんですか?
内田 満男さんからメールが来たんです。携帯の番号でやるメール(笑)。SMS? むかーしの人が使うやつ(笑)。
小笠原 (笑)。篤人がどうだったかは分からないけれど、「迷っている」という情報を聞いて。「じゃあ、帰ってこい」っていう連絡はしたかな。
内田 俺は帰るつもりでいたんです。
小笠原 そうなんだ。
内田 情報として「帰ります」とは言えなかったから。「考えています」と言っていたけれど。
小笠原 個人的には、一緒にまたやりたかったから。この経験を還元してくれるという存在が大事だと思ったし、チームの力になってくれるとも思ったから。
――メッセージは覚えていますか?
内田 覚えていますよ。言っていいですか?
小笠原 やめろ(笑)。
内田 そこらへんはシャイだから(笑)。でも、一言。めっちゃ短い言葉でしたね。5、6文字。剛さん(大岩前監督)からも連絡をいただいて、俺自身も帰るならアントラーズしか考えていなかった。アントラーズに振られなければ帰りたいと思っていました。