核心にシュートを!BACK NUMBER
好記録続出のシーホース三河と川崎ブレイブサンダースに起きていた“音声改革”って? 「あの演出、うちでも…」
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byL:SeaHorses MIKAWA co.,LTD./R:KAWASAKI BRAVE THUNDERS
posted2021/03/26 18:45
三河の金丸晃輔(左)と川崎の辻直人。両リームの音声改革は彼らのプレーにも間接的に影響を与えている
試合前の演出で選手のテンションも上がる
シュートが決まる音はファンにとって快感になるのだが、リングにはじかれた音は落胆を招く。だから、シュートがリングに近づくのを見て、入りそうなときはボリュームを上げ、外れそうなときは下げるという工夫もしている。
だが、エースの金丸晃輔はこう話す。
「僕の場合、試合中はコートの外の音は何も聞こえていないです。集中しているからでしょうか……。周囲が騒がしくても、静かでも、僕には関係なくて(笑)」
金丸はBリーグの初代「ベスト3P成功率賞」の受賞者であり、過去の4シーズン全てでベストファイブとベストフリースロー成功率賞を受賞している。また、フリースロー65本連続成功の記録を打ち立てた後、フリースローを外したときに、クラブのSNSを担当する“中の人”に「よかった機械じゃなくて人だった」とつぶやかせた偉人である。
「試合前の演出は、気持ちを高ぶらせる意味でもすごい大事で。うちの場合、選手が試合をやりやすい、テンションが上がる環境は年々、進化していると思っています」
プレー中の選手の耳には届かないとなると、この取り組みは誰のためのものなのだろうか?
ファンのためだ。
三河のホームゲームには重要なテーマがある。「スポーツマンシップ」だ。
アウェーチームであっても最大のリスペクトを
三河は、試合前のアウェーチームの選手紹介の時。過去に三河に所属した選手に加え、愛知県出身の選手については、特別な紹介をしている。
多くのクラブでは、アウェーチームの選手紹介時には名前が機械的に読み上げられる。せいぜい、過去に所属した選手には大きな拍手が送られるくらいだ。
三河のように、アウェーチームの地元出身の選手までも特別に紹介するのはかなり珍しい。
アウェーチームであっても愛知県出身の選手ならば、実家の家族や地元の友達、かつての恩師が応援に来るケースが多い。そうした事情も含めて、対戦相手にも感謝とリスペクトを伝えるための紹介なのだ。
試合中は相手チームに勝つために、会場が一体となって応援する。
試合の前後は、同じバスケットボールというスポーツを愛する仲間として最大限のリスペクトを示す。それが三河の姿勢だ。
福澤はスポーツマンシップにこだわる理由をこう語る。
「スポーツマンシップは、お客様から教えてもらった精神なんです。我々は応援団やファンの方々と頻繁にコミュニケーションをとるように心がけているのですが、スポーツマンシップはみなさんが大切にしているものです。ホームゲームの精神というのは、お客様とともに作り上げていった『演出』なのかもしれません」