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身長183cm体重89kg、堂々たる体格のスピードスケート日本記録保持者 「五輪は金メダルしか狙っていない」
posted2021/03/22 06:00
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
MATSUO.K/AFLO SPORT
平昌五輪で金メダル3個、銀2個、銅1個を獲得した女子勢に続けと、北京五輪を来年に控えた今季は、男子スピードスケート陣も大いに気を吐いた。その中で、金メダル候補としての立ち位置をあらためてアピールしたのが、男子500mの日本記録(33秒79)を持つ新濱立也(高崎健康福祉大職員)だ。
今季の国内公式戦ラストとなった2月11日の全日本選抜競技会長野大会で34秒62を出して優勝すると、その9日後に青森県八戸市で行なわれた記録会では、非公式ながら国内最高記録を上回る34秒43をマークした。標高が低く、記録が出にくいと見られていたリンクでの好記録。「ゴールしてびっくりした」と新濱自身が驚く滑りだった。
平昌五輪後に急速に台頭した。ナショナルチーム1年目の'18-'19シーズンにW杯初参戦を果たすと、そのシーズンの世界スプリント選手権で2位になった。さらにW杯ファイナルでは初日に加藤条治が持っていた日本記録の34秒21を大幅に塗り替える33秒83をマークし、2日目には33秒79と再更新。ナショナルチームの仲間たちが飛び上がって喜んだ。
「五輪では金メダルしか狙っていない」
身長183cm、体重89kgと外国勢に引けを取らない堂々たる体格の持ち主だ。脚力を氷に伝える技術が高く、ストレートの速さは国内随一。課題はスタートからの100mとインコースのカーブワークだが、それも着実に克服しつつある。
今季は欧州でW杯や世界選手権の代替大会が開催されたが、日本勢は新型コロナウイルス問題で海外派遣がなく、強化面ではマイナス面が多かった。ライバル勢との力関係を測りかねる難しさがある中で心の支えとなったのが、ともに世界の頂点を目指す村上右磨。新濱は「海外に行かなくても村上さんと切磋琢磨できるのが大きい」と盟友に感謝する。
そのうえで新濱が目指すのはあくまで北京五輪の頂点のみ。今季は計画的に3足の靴を試しながらレースを続けてきた。試行錯誤していた時期には転倒して恐怖心を引きずるなどメンタル面の不安にも直面したが、五輪の1年前となる2月に心技体をピークに持ってきたのは見事だった。
「1年後に本番がある時期にしっかりと自分のレースをできた。五輪では金メダルしか狙っていない」。精悍な目つきでそう言った。