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ドラフトウラ話 “阪神3位”大学ラスト登板で大乱調なのに…他球団スカウト「スゴいの獲ったなぁ」の真意
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
posted2020/11/18 17:03
阪神3位指名の佐藤蓮(上武大)。11月11日の対創価大、2番手で登板したが……
「あれだけ腕だけで力んで、あれだけバランスに苦しんで150キロ。すごいと思いますよ。どうしようもなくて、そーっと置きにいったようなボールで148キロ。とんでもないエンジンの大きさですよね」
指名した阪神関係者を“かばった談話”ではない。
「あのカーブ、もっと使えばいいのに…横にブレない真タテのパワーカーブみたいな軌道。ソフトバンクの石川(柊太)のカーブと似ていて、リリースが安定してますよね」
2イニング目のマウンドに上がった佐藤蓮。やはり、「剛速球」にこだわるが、なかなか軌道が作れない。
先頭の5番・古和田仁三塁手(174cm82kg・右投右打・新田高)を歩かせると、送りバントと見逃し三振を挟んで、死球、四球が続いて、ここで降板となった。
打者11人、アウト4つ取る間に、四球6つの死球が1つ。本人、ダグアウトでショック状態もよくわかるような内容だった。
大乱調でも…「むしろすごいの獲ったなぁ」
「阪神の関係者にしたら、心配になる内容でしょうけど、僕から見たら、むしろすごいの獲ったなぁ……っていう印象しかないですね。あれだけバランスを崩していて150キロ前後。リリースのタイミングが合った時は、いったいどんだけのボール投げるんじゃい!って話ですよ。それに、あのカーブ。今日は投げる余裕なかったけど、フォークもあるらしいし」
いわゆる、「伸びしろ」ということか。
「いや、それだけじゃ、伸びしろ抜群という評価はできないんじゃないですか」
もっと大切なものがあるという。
「今日の乱調を踏み台にして、そこから自分自身を立て直していく“強さ”があってほしい。僕の興味は、明日、あさっての彼ですね。ガックリしてふさぎ込むのか、こんちくしょー!で練習に戻っているのか」
もう、人のものですから……と前置きして、
「指名前の選手なら、明日、あさっての佐藤を見に行きたいですね、こっそりと。みんな、伸びしろ、伸びしろって簡単に言いますけど、人の伸びしろなんて、みんなが見てる場所だけじゃわかりませんよ。ひとりの時に、どれだけ負けじ魂を発揮できるか。そこに尽きると思いますね」