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なぜ楽天・涌井秀章(34)はウエートトレーニングをピタリとやめた? 本人が明かすイチローとダルの影響 

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田口元義

田口元義Genki Taguchi

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posted2020/11/07 11:03

なぜ楽天・涌井秀章(34)はウエートトレーニングをピタリとやめた? 本人が明かすイチローとダルの影響<Number Web> photograph by KYODO

今季チームトップの11勝。自身4年ぶりの2桁勝利を挙げた涌井

決断の裏にあったダルビッシュの存在

 決断のひとつのきっかけとなったのが、高校時代からのライバルであり、良き友であるダルビッシュ有の存在だったという。

「ストイック」と称されるほど、野球や自分の体をとことん追求することで知られているダルビッシュは、ウエートを積極的に取り入れている投手だ。そのことでパフォーマンスを上げられるのは、彼が体を理解し、扱いきれるからだと、涌井は知っている。

 誤解のないよう補足すれば、涌井が自分の体を熟知していなかったのではない。ウエートはレベルアップの手段のための選択であり、そのトレーニングが結果的に彼にとってハイリスクだったに過ぎない。それは、実践した者だからこそわかることなのだ。

 さらに言えば、失敗したことで視野を広げることもできた。

「自分もイチローさん側だなって」

 涌井はダルビッシュと対極に近い思考を持つイチローに着目した。これが、「脱ウエート」の契機にもなった。

 日米通算4367安打、現役28年の傑物ですら、メジャーリーガーとなって数年間はウエートを導入していたが、合わずにやめたという。そして、以前から続けている、関節の可動域を広げ、筋肉に柔軟性をもたらすといった効果がある初動負荷トレーニングなど、自分に適したトレーニングに切り替えた。そう本人が語っている。

 涌井がその逸話を引き出して言う。

「イチローさんも体形があまり変わらないじゃないですか。自分もそっち側だなって。結局、体を大きくしても、ダルビッシュみたいに扱えなかったら意味がないんで」

 ウエートを断ち切った涌井は、原点回帰した。高校時代からの、いわば“習慣”であるランニングを多く取り入れる。持久系だけでなく、チームのメニューに組み込まれているダッシュなどの瞬発系も精力的にこなす。筋力アップを図る場合は、器具を使わず腹筋などで補っているのだという。

「本当に昭和のトレーニングなんですよね。自分にはそっちのほうが合ってるんで」

 そう言って笑うが、涌井の練習量は、楽天の若手や中堅選手も驚くほどだ。

 涌井が「だからね」と続ける。

「若い子とかにトレーニングのことを聞かれたら、イチローさんの言葉を使うんですよ。『ライオンがトレーニングをして、あんなすごい筋肉を身に付けましたか?』って。結局は、自分の体に合ったトレーニングをすることが大事なんで、こういう表現で伝えたほうがわかりやすいかなって思うんですよね」

【次ページ】 ダルビッシュからの1通のメール

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