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藤井聡太の将棋はどこが美しいのか。「芸術作品」と評す飯島七段に聞く。 

text by

中村徹

中村徹Toru Nakamura

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photograph byKYODO

posted2020/09/08 19:00

藤井聡太の将棋はどこが美しいのか。「芸術作品」と評す飯島七段に聞く。<Number Web> photograph by KYODO

数々の記録を更新し続ける藤井聡太。現在では史上最年少での二冠と八段昇段も決めている。

鬼気迫る“王手ラッシュ”をかいくぐった。

 プロでも頭を悩ませる難問が続出する「詰将棋解答選手権」で、小学6年生から5連覇中の藤井にとって、「詰む・詰まない」の見極めは得意中の得意。

「昨秋、山梨県甲府市で将棋イベントがあり、渡辺さんや永瀬さんなど錚々たるメンバーが集まったんですが、その時に藤井さんが控室で『こういうのあるんですけど』と言って、布の盤に自作の詰将棋を並べたんです。

 棋士たちはみんな目の色を変えて解こうとしました。僕は恥ずかしいんですが解けなくて、『宿題にします』といって場を離れました。一日かかりましたね、解くまでに。17手詰めくらいでした。藤井さんの詰将棋の才能は別格です」


 渡辺との棋聖戦第1局の最終盤でも、渡辺の鬼気迫る16手連続の“王手ラッシュ”を見事にかいくぐって勝ち切った。

フェルメールや印象派の絵を観ているかのよう。

 飯島は、藤井の将棋を解説しながらかつてない感覚に捉われたと言う。

「彼の将棋を、ずっと見ていたいなと感じたんです。将棋はいつか必ず終わります。僕は野球やゴルフも大好きなんですが、どれだけの名勝負でも、延長戦やプレーオフがあっても、やがて必ず決着はついてしまいますよね。でも永瀬さんや渡辺さんとの対局は終わって欲しくなかった。

 美術館でフェルメールや印象派の絵を観ている時と同じような感覚です。『このまま長く観ていたいな』っていう……。

 対局者は、共同作業で最高の棋譜を残したと思います」

 タイトルに片手がかかっている藤井。このまま戴冠し、かつての羽生善治九段(49)のように「一人勝ち」の時代を築くのだろうか。

【次ページ】 「羽生マジック」と呼ばれる妙手を繰り出す。

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