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公立でも複数の投手は育てられる。
甲子園中止が可能にした新采配。 

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氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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photograph byHideki Sugiyama

posted2020/08/02 08:00

公立でも複数の投手は育てられる。甲子園中止が可能にした新采配。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

甲子園優勝を目指す学校でも、普通の公立校でも、投手は複数いた方がいい。ならば何を躊躇することがあるのだろうか。

斎藤佑樹、島袋洋奨、吉田輝星の投げすぎ。

 2006年夏の覇者、早稲田実のエース斎藤佑樹(日本ハム)は7試合で948球を投げた。2010年に春夏連覇を果たした興南高の島袋洋奨(元ソフトバンク)は夏に783球。2018年の準優勝投手、吉田輝星(日本ハム)は地区大会から甲子園の決勝戦の5回までを1人で投げ抜いた。

 島袋が2010年の夏の3回戦と準々決勝で連投した際、我喜屋優監督は「島袋は昨日投げたばかりで連投になりますが、ここを乗り越えることができれば、歴代の『甲子園の怪物』と言われた投手たちに並ぶことになります。連投の練習は積んできましたから、ぜひ力を発揮して欲しい」と語った。しかし、島袋は大学に進学してから故障を繰り返している。

 島袋や、のちに1試合234球を投じてプロ入り後も苦しむ安楽智大(楽天)らのケースを経て、近年ようやく投げすぎることが問題視されるようになったのである。

 2018年12月には、新潟県高校野球連盟が独自に球数制限を導入すると発表。のちに日本高野連の手によって翻されたものの、本来なら今年の春の甲子園からは球数制限が導入されるはずだった。時代の流れは投手の健康面を守る方へと向かってい。

公立で複数の投手は育たない?

 とはいえ、球数制限の導入についての議論は一筋縄ではいかなかった。スポーツ整形の専門たちはその必要性を主張していたが、現場の指導者たちの理解を得ることに苦労していた。

 反対の理由の多くは「平等さに欠けること」だった。

 球数制限を実施した場合、選手の質が高く部員数も多い私学が圧倒的に優位になる。公立校では投手を多く育てられないから差が出てしまう。そんな論理だ。

 ところが今年の各都道府県の独自大会では、意外なことが起きている。

 公立校も複数の投手を起用し、これまで出場機会のなかった選手たちがマウンドに立っているのだ。

【次ページ】 エースが受験に専念、4人の投手で。

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