マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
プロ野球と観客についての思い出話。
後楽園球場がガラガラだった頃。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2020/06/25 07:00
満員、ガラガラ、無観客。それぞれのプロ野球はどれほど違うのか、そしてどれほど同じなのだろうか。
目に見えない観客たちに見守られて。
観客がいないとさみしいと選手たちは口を揃えるが、いたらいたでちょっと困ることもないではないというのも、以前から選手たちがよく話していた。
ヤジは聞こえるし、夏場は観客の衣服でスタンドが白く見えて、三塁手からの一塁送球やセンター方向への低いライナーが見にくくなるなんてこともある。
応援の音楽も、投手たちは投げるタイミングを自分の都合で決められるから、そのリズムを味方につけることもできるが、打者のほうは逆に、応援の音楽のリズムが、自分たちの動きのリズムをかき乱すことがあるという。
応援で集中が乱れるタイプには、無観客は集中が高まってかえってありがたいだろう。「観客」の存在は、時にありがたい追い風にもなれば、アゲンストの風となって選手たちをかき乱すこともありながら、選手たちは観客に育てられていくもののようだ。
ともあれ、無観客で始まった「2020プロ野球」。
実況するテレビ中継の視聴率は、例年になく高いと聞いた。
観客のいないスタンドの向こうに、目には見えない無数の「観客」たちの視線を浴びながら、ペナントレースは続いていく。