球道雑記BACK NUMBER
和田康士朗、一歩一歩夢へ進んだ道。
ロッテの俊足が2020年を駆ける!
posted2020/06/19 11:30
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph by
Kyodo News
練習試合13試合中、途中出場が12回。
されど盗塁数は12球団中単独トップの7を記録して、その名を全国のプロ野球ファンに轟かせた。
特筆すべきは盗塁を仕掛ける際の思い切りの良さと加速の速さ。まだまだ牽制球の対応に課題は残すが、6月14日の練習試合(対埼玉西武)では6回表、相手の牽制球に誘い出されるも、なりふり構わずにそのまま2塁へとスタート。50m5秒8の快足を飛ばして、結果的に一塁手・山川穂高の悪送球を誘って盗塁を成功させた。
さらに8回表の一死一塁の場面でもこの日2つ目の盗塁に成功。二塁到達のタイミングにまだまだ余裕があり、来たるべき開幕に向けて西武首脳陣も警戒を強めたことだろう。
このペースのままシーズンでも盗塁を量産すれば、現在は代走がメインとはいえ盗塁王の獲得も夢ではなくなる存在。そんな浪漫を追いたくなる選手。それが千葉ロッテの3年目・和田康士朗だ。
プロへの道は一歩ずつ。
彼の名前を初めて聞く人もいるだろう。
それもそのはず。彼はこの6月、育成枠から支配下に昇格したばかりだ。
経歴が異色なのも馴染みがない理由なのかもしれない。
小学4年生のときに始めた野球は中学時代に負った怪我の影響もあって、一度はやめる決意をした。
埼玉県にある県立小川高では陸上部に入部。高校球児としての最大の夢「甲子園を目指す」ことは諦め別の道に進んだ。しかし、大好きな野球を捨てきれず、高校2年から地元埼玉のクラブチーム「都幾川(ときがわ)倶楽部硬式野球団」の門を叩く。
当時は「プロ入り」なんて意識すらしていなかったというが、高校卒業後の進路として選んだBCリーグのトライアウト受験を経て、富山サンダーバーズから1位指名を受けると、おぼろげながらNPB入りの夢を見るよう心境にも変化が出た。
BC富山在籍時は、ウェブ上に溢れる野球動画を見るなどして打撃フォームを研究。なかでも参考にしたのは福岡ソフトバンクの柳田悠岐だった。彼を参考にした豪快なスイングと俊足はたちまち野球ファンやNPBのスカウト達の目に留まり、その1年後の2017年には千葉ロッテから育成ドラフト1位で指名を受け、念願のNPB(千葉ロッテ)入りを果たす。夢がひとつずつ形になってきた。