松岡修造のパラリンピック一直線!BACK NUMBER
車いすフェンシング・加納慎太郎の
「バカドリーム」に松岡修造がエール。
text by
松岡修造Shuzo Matsuoka
photograph byNanae Suzuki
posted2020/05/06 08:00
フェンサーのウェアを着た松岡修造と加納慎太郎。加納の壮大な夢に松岡も感心しきり。
「剣道をベースにした車いすフェンシングを目指して」
松岡「ということは、慎太郎さんのフェンシングには剣道のエッセンスが溶け込んでいるんですか」
加納「そうですね。剣道をベースにした車いすフェンシングを目指してます。礼に始まって礼に終わるのは一緒ですし、相手に対して敬意を払ったり、気持ちで負けてはいけないところも同じ。相手がいくら強くても、自分は勝てると信じて毎回戦ってます」
松岡「でも、世界へ行くとなかなか自分を信じ切れないじゃないですか。僕の経験からしても、世界は強いという思い込みがあるから。そういうのはないですか」
加納「僕の考え方は、負けないための練習をしたから、絶対に勝てると。たとえ前回、ボロ負けした相手でも、次は勝ってやるという気持ちでやってますし、このピストの上には支えてくれた人たちの思いも背負って乗っているので負けられないんです。気持ちで負けていたら、その方たちに対しても失礼ですから」
松岡「今、これを読んでいる読者の中には、どうしたらそんなに強くなれるんだろうと思っている方もいるはずなんです。そういった方へ、何かアドバイスを言えるとしたら」
「たとえ過去は変えられなくても……」
加納「そうですね、やっぱり自分の可能性を信じることが大切なのかなと。ありきたりな言葉なんですけど、それが一番大事なような気がします。僕もよく勘違いをするんですけど、たとえ勘違いでも自分を信じて一歩踏み出せば、状況は変わっていくと思うんですよ。この競技が好きなら挑戦したい気持ちも湧いてくるだろうし、競技に愛情があるなら情熱は自然と出てくるものだと思ってます」
松岡「バイクの事故に遭ってから、10年間は障がいを受容できなかった。でもいまはそうじゃない。もう悔やんだり、過去を振り返ることはないですか」
加納「そうですね、障がいを負って良かったとまでは思わないですけど、自分が挑戦することで未来は変えられると思っている。たとえ過去は変えられなくても、突き進んでいけば未来は良い方向に変えていけるんじゃないかなって」