ボクシングPRESSBACK NUMBER
あのパッキャオが失神した衝撃KO。
2010年代最高のファイトと疑惑。
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byAFLO
posted2020/04/09 19:00
4度目の対戦となった2012年12月。マルケスの完璧なカウンターを浴びたパッキャオは前のめりに倒れた。
第一線に立ち続けるパッキャオ。
あれほどの好試合後にPEDの話をしなければいけないのは残念ではあるが、現代のスポーツ界では年齢を超越した偉業はほぼすべて疑いの目で見られる傾向にある。薬物疑惑はパッキャオ、メイウェザーにもあった。そういった背景から、ベストファイトかどうかは意見が分かれるとしても、『パッキャオvs.マルケス4』はやはり現代を象徴するファイトと呼ばれるに相応しかっただろう。
積年の思いを込めたマルケスのカウンターで轟沈したその時、もう2度とパッキャオの姿をリング上で見ることはないと感じた人も少なくなかったのではないか。しかし、この衝撃的なKO負けから7年以上が過ぎ、信じ難いことにパッキャオは依然として第一線で戦い続けている。2019年はエイドリアン・ブローナー、キース・サーマン(ともにアメリカ)といったひとまわりほど若い選手たちにも明白な判定勝利を収めた。
ほとんど奇跡のようなキャリアを振り返ると、あの日にマルケスが成し遂げたKO劇が、なおさら特別なものとして浮かび上がってくるのである。