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早稲田ラグビー部“Reborn”計画。
明治に敗れたのは無駄ではなかった。
posted2019/12/24 18:00
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Naoki Ishii
早明戦の完敗からちょうど20日が経過した12月21日、大学選手権準々決勝で早稲田は日大を57-14で退けた。
選手たちの動きにはキレがあり、この3週間弱、しっかりした練習が積めていることがうかがわれた。
試合後の会見で、主将の齋藤直人は早明戦が終わってからのテーマについて話した。
「早明戦で負けたあと、“Reborn”というテーマをチームとして掲げました。早明戦での反省に基づいて、まずはしっかりとディフェンスをやる。これについては日大さんをロースコアに抑えられて良かったと思います。もうひとつは、春先から取り組んできたボールを動かすということです」
Rebornという言葉が美しく表現されたのは、前半13分の自陣5mからのマイボールスクラムだ。
ここまでの早稲田であれば、スクラムからFWのサイドアタックで陣地を少し挽回し、そこからキック――というストーリーが考えられたが、この時は早い球出しで9番齋藤から12番吉村へと飛ばしパス、吉村はまたひとり飛ばして快足FBの河瀬にパスを投げる。
すると河瀬は俊足を飛ばして大きくゲインし、WTB古賀にラストパスを出してトライ。早稲田は90m以上、自慢の黄金バックスでボールを運んでトライを奪った。電撃的なトライである。
脱出ではなく、強みのアタックを。
このアタックは準備されたものだったと齋藤は話した。
「早明戦では、あのエリアで脱出ばかりを考えていたので、本来の強みであるアタックを仕掛けるというオプションがなかったんです。今回は、試合前の分析で日大BKの外側のディフェンスが下がり気味ということで、そこを突いていきました。練習の成果が出たと思います」
早稲田が自陣から積極的に展開し、爽快なトライを奪うのは、久しぶりに見た気がした。SOの岸岡智樹は、自陣からのアタックについてはマインドセットが変わってきたと話す。
「今日はどちらかといえば、ディフェンス・フォーカスの試合でしたが、ボールを積極的に運ぶことは意識しましたね。早明戦はどちらかというと、保守的なゲーム運びになってしまって、自陣の22mの内側からボールを動かすという発想はなかったです。守りというか、ネガティブなマインドセットになっていたと思うので、そのあたりは意識は変わりました」
どうやらアタックに関していえば、Rebornはすぐにでも実現しそうな気配だ。
早明戦に敗れたことは、無駄ではなかった。