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松本の街を変え、自らも変わったDF。
飯田真輝がトライアウトで語る胸中。
posted2019/12/23 19:00
text by
海江田哲朗Tetsuro Kaieda
photograph by
Tetsuro Kaieda
相手の足元にボールが入った瞬間、一気に間合いを詰めてガツンと身体をぶつける。パワーでねじ伏せ、前を向くことさえ許さない。そして、片時も休まず味方に活を入れ、時に激しく吼えた。
飯田真輝、34歳。内なる炎の勢いは衰えるどころか、猛々しく燃えたぎっている。
「火が消えてたら、ここにいないんでね」
飯田はそう言って笑った。
12月16日と17日、2019JPFA(日本プロサッカー選手会)トライアウトがフクダ電子アリーナで開催された。
対象は、所属クラブを契約満了となった選手たち。今回は計118名の参加者を数えた。トライアウトは7対7のミニゲームと30分ハーフのゲーム形式で行われ、集まった各クラブの強化担当が来季の補強の材料とする場だ。興味を持てば、選手本人、あるいは移籍の窓口となる仲介人(代理人)にすぐさま接触できるメリットがある。
「ソリさん、辞めるんだな」
飯田はJFL時代から9年半プレーした松本山雅FCを契約満了となった。そこに至るまで、予感めいたものはあった。
今季、松本は17位でJ2に降格。リーグ最終節から一夜明けた8日、8シーズンにわたってチームを率いた反町康治監督の辞任を発表した。その報せを聞き、飯田はクラブとの契約交渉に向かっている。「ソリさん、辞めるんだな。このタイミングで自分も終わりになるのはあり得る」と感じた。
テーブルの向こうには、加藤善之副社長と柴田峡編成部長。契約満了の提示を受け、この先について考えを訊かれた飯田は、「選手を続けます」と即答している。
現役続行の意思は、クラブ側も見越していた。柴田は言う。
「そうくるだろうと予想はしていました。2年前に結婚し、生活面を見直したことで身体が絞れ、充分に動ける状態にある。おそらく体脂肪率は、いまが一番低いんじゃないですか。腹筋なんてバキバキに割れてますよ。
20代の頃はゆるく、30を過ぎてから割れるってどういうこと? と不思議に思います。今季、攻撃面では最も進境が見られた選手でもある。計算できる飯田がいてくれれば、チームの助けになるのは百も承知です」