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村田諒太は初防衛戦へ好調&明るい。
作戦は「相手が嫌になるまで殴る」。 

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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posted2019/12/21 20:00

村田諒太は初防衛戦へ好調&明るい。作戦は「相手が嫌になるまで殴る」。<Number Web> photograph by AFLO

村田諒太の表情は明るい。しかし好調が勝利を約束する甘い世界でないことは、本人が誰よりもわかっている。

挑戦者はパンチは強いが脆さもある。

 そんな充実の村田に立ち向かう挑戦者のバトラーに目を向けてみよう。

 バトラーは28勝(24KO)1敗1分の24歳。ニックネームは“バンバン”で、戦績が示すようにパンチ力には自信を持っている。

 一方で、プロに入って唯一の敗北は7回TKO負け。村田のパートナーとして今回来日したビタリ・コピレンコとの今年5月の試合では、8回にボディブローでダウンを喫して辛くも2-1判定勝ちというから、打たれるともろいところがあるのも事実だ。

 16日の公開練習でバトラーは早速、爆発的なパンチ力の一端を披露した。動きそのものにスピードは感じさせないものの、ゆったりしたリズムから突然力を入れて放つパンチは左右ともにかなりの迫力。

 特に踏み込んでの右ストレートは予想以上に伸びてくる。右強打はなかなか危険だという印象を受けた。「爆発的な試合をお見せする」と言い放ったバトラーがどのようなファイトを仕掛けてくるのかは興味深い。

村田は慎重に、中盤以降のKOを狙う。

 帝拳ジムの浜田剛史代表は「好戦的なボクサーファイターとして前に出てくるのか、それとも足を使うのか。大きく分けるとこの2つ」と挑戦者の出方を予想した。いずれにしてもバトラーはどうにかして一発をねじ込もうとしてくるだろう。

 もし日本のスーパースターを倒そうものなら、人生は劇的に変わるのだ。目の色をかえて、己のすべてをかけてベルトを奪いにかかるに違いない。

 失うものがない、というのがバトラーの強みなのだから。

 村田はバトラーの強打に注意しながら、序盤はもらわないことに主眼を置いて慎重に試合を進めるはずだ。

 バトラーのパンチを鉄壁のガードでしっかりブロックし、すぐに圧力をかけて手数を出す、という作業を地道に繰り返す。やがて挑戦者に打つ手がなくなり、村田がペースを掌握する。中盤からペースアップしていき、終盤にストップできれば理想的だろう。

【次ページ】 この一戦にかけることが将来につながる。

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村田諒太
スティーブン・バトラー

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