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世界で最も代打本塁打を打った男。
高井保弘の思い出と心に残る言葉。
posted2019/12/18 10:30
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph by
Kyodo News
世界最多の代打通算27本塁打を記録した元阪急ブレーブスの高井保弘さんが13日、74歳で亡くなられた。
ちょっとパーソナルな話になるけれど――。
子供の頃、阪急ブレーブスのファンだった時期があり、関西地方だけで放映していたブレーブス・ファンのためのテレビ番組に出演した。
番組は現役選手による野球教室という内容で、応募したのは「投手編」。第1期「長嶋巨人」を倒して日本一になった黄金期のブレーブスだったので、山田久志さんや山口高志さんに会えるというだけで、前の晩は寝られなかったのを覚えている。
ところが撮影当日、雨のために撮影が中止。翌週だか、翌々週だかに撮影日が変更されただけではなく、野球教室の内容も「投手編」から「守備・投手・打撃編」に変更された。
主催者からは、どの選手が来るとは言われなかった。きっと大人の事情があったのだろう。保護者共々、聞き逃したのかも知れないが。
高井さんのガタイの良さにビビった。
当日、会場(西宮第二球場だったと思う)に行ってみると、憧れのブレーブスのユニフォームを着た大橋穣遊撃手と、足立光宏投手、そして高井保弘さんがおられた。
周りの子供たちと一緒になって、思わず「うわっ、ショートの大橋や! アンダースローの足立や!」と呼び捨てにしてしまったが、高井さんにだけは『代打男やっ!』と口に出せなかった。子供全員、単純にがっしりした体つきにビビっていたからだ。
もちろん、大橋さんや足立さんを呼び捨てにしたことについては、球団職員の人たちから、しっかりお叱りを受けたのは言うまでもない。
野球教室が始まると、大橋さんのグラブ捌きがとてつもなく速いことや、足立さんのコントロールがとてつもなく良いことが印象的だった。
子供の頃はとにかく、内野ノックを華麗にこなす姿や見たこともないような速い球を投げる姿の方を「生で見る」衝撃の方が想定外で、打撃よりも心に残ったのだろう。