大山加奈のVolleyball is Life BACK NUMBER

“メグカナ”を経験した今だからこそ。
大山加奈が願うバレー界の意識変化。 

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大山加奈

大山加奈Kana Oyama

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photograph byItaru Chiba

posted2019/11/28 11:50

“メグカナ”を経験した今だからこそ。大山加奈が願うバレー界の意識変化。<Number Web> photograph by Itaru Chiba

W杯でベストオポジットに輝いた西田は、総得点でも3位に。所属するジェイテクトは現在、Vリーグで8勝1敗で2位につけている。

「メグカナ」ブームを振り返ると。

 実際に、2003年のワールドカップでは「メグカナ」としてメグと一緒に取り上げられる機会が多くありました。注目してもらえるのは本当にありがたいことですが、メグといるだけで、試合に出ていなくても常にカメラが集まってくる。こんな状況で自分たちばかりが注目されていいのだろうか、と先輩たちに対して気まずさを感じ、自然にメグと距離を取るようになりました。

 日本代表に選ばれた頃は、夢だった場所に自分が立てる喜びだけで、目標を達成したい、バレーボールがうまくなりたい、いつもそればかり考えていました。でも、過度な注目を受けるようになってからは、目が向くようになったのは「目標」でも「バレーボール」でもなく「メディア」「ファン」「先輩」の視線。

 期待に応えなきゃ、と自分のためよりも見えない誰かのために必死で、何のためにバレーボールをしているのか。その芯や軸がブレていました。

 自分のことを振り返ると、なぜあんなに周囲のことばかり気にしていたのだろう。どうしてあんなにも余裕がなかったのだろう。今ではそう思います。

 内気な私の性格を見かね、当時はチームや周りの方々に過剰なほど守ってもらっていて、どこかでそれが当たり前に思っていた時期もありました。でも、今になって思うのは人に「やってもらう」ではなく、自分のことは自分で考え、管理する。その当たり前のことが、当時の自分には欠けていた、ということです。

特別扱いするのではなく。

 バレーボール以外にも若手選手の台頭や活躍は目ざましく、卓球やサッカーなど他競技に目を向ければ、西田選手と同じ年頃の選手も海外トップリーグやトップクラブに身を置き、現地メディアに現地の言葉で対応し、スポンサーを獲得する。1人の選手としてブランディングをするのはもちろん、その競技の看板を背負っている自覚があるから「競技だけに集中すればいい」というばかりではありません。

 大学を卒業してすぐに海外へ渡った石川祐希選手や、その背中を見て影響を受けて来たであろう西田選手、石川真佑選手にはそんな存在になるであろう可能性、力があります。だからこそ、彼ら、彼女たちばかりを特別扱いするのではなく、「西田くんすごい」「石川くんすごい」と憧れて続こうとする子供たちが、より羽ばたき、輝くために何をすべきか。

【次ページ】 いまこそ、環境を変えるチャンス。

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