スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
「先発はクボ+10人であるべきだ」
久保建英初得点と現地タクシーにて。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byDaisuke Nakashima/AFLO
posted2019/11/12 20:00
ビジャレアル守備陣が立ち尽くし、主審も口をあんぐり。久保建英が叩き込んだスペイン初ゴールの価値を感じさせる。
「PKと判断できるだけのコンタクト」
そのような流れで迎えた第13節ビジャレアル戦。久保が2戦連続で先発を維持できたのは、恐らくベテラン司令塔のサルバ・セビージャが出場停止で不在だったからだろう。
サルバの代役は23歳のアレイシ・フェバスが担い、久保はいつも通り2列目の右サイドに入った。
しかし、前節との違いが1つあった。
普段はサルバが務めているセットプレーのキッカーを、久保が任されたことだ。
11分、久保が蹴った左CKのはね返りが再び久保の足元に収まる。すかさず久保はザンボ・アンギサを縦にかわしてペナルティーエリア内へ侵入。さらにヘラルド・モレノを右にかわすと、両足で飛び込んだビセンテ・イボーラより一瞬早くボールをつつき、倒れ込んだ。
「PKと判定できるだけのコンタクトはあったと思う」
本人の言葉通り、このプレーはVARの確認を経て、マジョルカの先制点となるPKと判定される。
そして先述のヘタフェ戦以来、8試合ぶりに得点に関与したこのプレーを皮切りに、久保は急激に存在感を増していった。
同僚の助言でシュートに踏み切れた。
21分にはダニ・ロドリゲスからのパスを左足のヒールでリターン。これを受けたダニがDFライン裏へ抜け出し、最後はフェバスがセルヒオ・アセンホに倒されて、2-0とマジョルカが突き放すPKが生まれた。
その後はビジャレアルに押し込まれる時間が続く中、49分にPKを与えて1点差に詰め寄られる。その数分後に生まれた久保の初ゴールは、嫌な流れを一変させるインパクトがあった。
53分。ペナルティーエリア手前中央に寄ってきた久保が、フェバスの横パスを受ける。左足で短く左にボールを運ぶと、右から体を寄せてきたモイ・ゴメスより一瞬早く、ワンステップで左足をコンパクトに振り抜いた。
「ボールを受ける前からシュートを打とうと決めていた」
豪快にゴールネットを揺らした待望の一発について、久保は試合後のフラッシュインタビューでそう振り返っている。迷わずシュートに踏み切った理由は、チームメートの助言にあったという。
「ハーフタイムにアリダイ(・カブレラ)から、点を取りたければシュートを打てと言われていた。実際その通りになったので、彼に感謝したい」