ベテランの経験を買った。

　実はベネズエラ戦の同点に追いつかれた6回1死二、三塁で大竹寛投手（巨人）を投入した場面ではこんな話があった。

　この場面でベンチは内野に中間守備を指示してゴロなら1点は諦めて1つのアウトをとるシフトを選択していた。しかしシュート系のボールでゴロを打たせて取るのが身上の大竹であれば前進守備をすべきで、中間守備をとるのであれば三振を取れる甲斐野ではなかったのかという指摘があったのだ。

　だがこのとき稲葉監督が語ったのは、代表初招集で投げれば今大会初登板という甲斐野には「あの場面は厳しい」ということだった。だからベテランの経験を買ったという起用だったのだ。しかしこれだけ実績を積み上げれば、今度は同じような場面がくれば間違いなく甲斐野が指名されることになる。

東京五輪への収穫。

　それだけ首脳陣の信用も勝ち取り、もはやジャパンの中継ぎエースと呼べるポジションまで上がってきている。東京五輪でも貴重なブルペン要員として招集されるのは、ほぼ間違いない存在となったのである。

　世界一奪回。「プレミア12」を前に、稲葉監督が掲げたこの目標はもちろん大事である。ただ、この大会では、勝つことと同時に、どれだけ本番の東京オリンピックにつながる収穫を手にすることができるかで、実は本当に大事なのはそちらのはずなのである。

　苦しい中での4連勝。しかしこの2人に使える見込みがついたことに、4連勝という数字以上の価値があったはずである。