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川崎ルヴァン初制覇へ機は熟した。
鹿島のお株を奪う試合巧者ぶり。
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph byGetty Images
posted2019/10/15 11:50
鮮やかにも、したたかにも勝ちきれる。J1連覇を果たしたことで強さを増したフロンターレ、ルヴァン初制覇まであと1勝だ。
川崎らしいパスワーク復活の理由。
守備のスイッチを入れ続けた小林は、前線だけではなくチーム全体で要所を押さえた守りができた手応えを口にする。
「憲剛さんと2人で相手のボランチのところをチェックすること、そして前半に失点はしないこと。点を取りに行く気はありましたが、まずは失点しないことがすごく大事だった。みんなが二度追いしたり、ひとりひとりがスペースを埋めたり、戻ったりができていた。それで前半、シュートゼロに抑えられたのだと思います」
鹿島の攻撃を沈黙させた一方で、川崎は前半だけで8本ものシュートを放っている。ボールを持てば、自分たちの距離感で動かし、テンポの良いパスワークで鹿島陣内に侵入。そしてフィニッシュワークまで持ち込んでいった。
思えば、夏が終わるまでどこかなりを潜めていた川崎らしいパスワークは、今やすっかり復活してきている。
復活した理由はいくつかあるが、1つは、後ろでのビルドアップが安定し始めてきたことだろう。
この試合では、登里享平、山村和也、谷口彰悟、車屋紳太郎というボールを動かせる技術のある4人が並んだ。彼らは相手を見ながらプレッシャーを外す「出して、動く」、そして「運ぶ」という作業を忠実に行い、その最終ラインのサポートに、GK新井章太と守田英正が顔を出し、自信を持って後方からゲームを作っていった。
守田が口にする攻撃の好感触。
川崎のボールの出しどころが多くなることで、鹿島はボールの取り所を絞りにくくなる。良いテンポで配給されれば、前の選手もボールを持った時に、余裕を持って攻撃のデザインを描ける。後ろのビルドアップが安定したことで、攻撃の循環も復活しつつあるのだ。攻守におけるリンクマンを担うボランチの守田は好感触を口にする。
「やっぱり良いときはマイボールで相手を動かしながら、ができる。自分たちが相手を動かして、ボールも動かすということが自然とできている。今はそれができていてすごくいい状態だと思います」
後半途中から大島僚太が入ると、そのテンポはさらに加速した。そうやって川崎らしく、ボールを握りながら、相手を動かしながら、時計の針を進めていった。