令和の野球探訪BACK NUMBER
慶應大から最多6人のプロ志望。
自主性を重んじる大久保監督の教え。
text by
高木遊Yu Takagi
photograph byYu Takagi
posted2019/10/12 19:00
自己判断ができるチームを目指していると語る慶應大野球部・大久保秀昭監督。
自ら考えて動くことが大前提。
そんな過程や背景があるから、今回の6選手たちが「野球でもっと高みを」と思うことは、決して「野球しかない」ということではない。あらゆる可能性の中から野球を一番の重きとすることを選んだからに過ぎないのだ。大久保監督も彼らのその強い意志を最大限に尊重する。
「もしかしたら、“企業を下に見るんじゃない”とか“慶應の価値はそんなものか”と言われる方は、いるかもしれません。でも(プロに入るには)縁とタイミングと本人の意志が一番大事なことで、その自己判断ができるチームでないといけないと思います。“学校のプライド”で本人の可能性を摘んでしまうことを僕はできないかなと思いますね」
日頃から、やらされているのではなく「自ら考えて動くこと」を大前提としているからこそ、それは進路決定においてもブレることは無い。
プロになるための時間ではない。
一方で大久保監督は、プロを目指す選手たちに勘違いだけはさせないようにしている。
「自分の夢は大事だけど、学生野球は(最後の)この1年しかない。彼らがプロ野球選手になるために僕らは活動しているわけではありません。6人以外の同期40人くらいはほとんど野球を完結させるわけですから、そんなことは野球のルーツ校であってはなりません」
そのことが表れているようにチームは、秋季リーグ戦でここまで2カードを戦い4勝無敗。13日から開幕6連勝中の法政大との天王山を迎える。「誰でも主役になれて、誰かがミスしても誰かがカバーをできるチーム」と強打の右打者・中村が語るように結束力は強い。
野球の面白さや奥深さを追求し続ける6人と、野球人生を有終の美で飾ろうとする4年生たち。多種多様な道を進む彼らが一丸となって優勝を目指す姿には、単純な勝ち負けだけではない魅力が詰まっている。