GKは経験が大事なポジション。

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　30代は色々と経験も積んで、体もまだまだ元気だし、自分の中では脂が乗っていた時期。たくさんのミスもしてきたけれど、そこから得たものはすごく試合で生きたし、ミスをしてもうまく消化ができていたと思っています。

　GKは経験が大事なポジションです。でも、経験で自分をストップさせるのではなくて、挑戦することやアグレッシブにプレーすることは失っちゃいけない。

　自分はできるという自信はもちろん大事ですけど、一方で自分はまだまだだと思うことも必要で。試合では自信を持ってプレーするけれども、練習ではまだまだだという姿勢で臨む。そういうバランスが重要だと思うんです。キーパーやディフェンスなら相手にやられるときもあります。というか、だいたいやられるじゃないですか。そこですごくナーバスになって感情を出す選手もいますし、自分にもそういう時期がありましたけど、色々な経験を経て、結局は全て自分のせいにするべきだと思ったし、それを次で挽回しないといけないと考える。結局はその繰り返しだし、それが自分を成長させてくれるのではないでしょうか。

ルーティンもない、験担ぎもしない。

　試合前のルーティンも僕はありませんでした。ルーティンが良いパフォーマンスにつながるという選手もいますし、それはそれでいいとは思いますけど……。験担ぎを大事にしているけど、負けるたびにどんどんやることを変える選手がいるのも見ましたし、はっきり言ってそんなの全く関係ないって僕は思うんですよね。結局、試合では今まで自分がどれだけ練習してきたかが出るだけ。だから、あえて頼るならそれは自分の中にあるものでしょう。

　はっきり言って、経験を積んでもどんなシュートが飛んでくるかなんて分かりません。ずっと練習していても全然違うシチュエーションで飛んでくるかもしれない。だけどどんなボールが来ても驚かない、そのための準備や心構えをするために、練習を積み重ねていかないといけないのです。

　横浜フリューゲルスが1998年になくなった時は僕らも報道で初めて知って。自分たちにはそれを覆すほどの力はないかもしれないけれど、でも試合で勝つことや署名を集めること、チェアマンに直接訴えかけに行ったことなど、選手としてやること、できることは全部やりました。結果は覆りませんでしたが、やるべきことはやったからこそ、あとはもう仕方がないと思えた。

　ここまで大きなことはなかなかないけれど、悪いことがあったとしても、その経験があったからこそ成功することもあるだろうし、何かにつながっていくこともあるんじゃないか。その時点ではそこまでポジティブに考えられないかもしれないけど、いつかはそう思えるときが来るんじゃないかって考えるんです。だからこそ、予測がつかないことが起きても全力を尽くすことは大事だし、モチベーションを見つけて進んでいくしかない。そういう向上心は、引退した今も持ち続けています。

楢﨑 正剛Seigo Narazaki

1976年4月15日、奈良県生まれ。'95年に奈良育英高校から横浜フリューゲルスに入団し、1年目から活躍。クラブの消滅に伴い、'99年に名古屋グランパスへ移籍。'10年にはリーグ優勝を果たし、MVPにも輝く。W杯には'98年フランス大会から4大会連続出場。'19年1月に現役を引退し、現在は名古屋グランパスのCSF（クラブ・スペシャル・フェロー）として、後進のGK育成のために国内外の指導・育成現場の視察などの活動を行なっている。

新しいナビゲーターに俳優の田辺誠一さんを迎え、番組デザインもリニューアル。アスリートの「美学」を10の質問で紐解き、そこから浮かび上がる“人生のヒント”と皆さんの「あした」をつなぎます。スポーツ総合誌「Number」も企画協力。

番組ナビゲーター（ナレーション）田辺誠一

第77回：楢﨑正剛（サッカー）

10月18日（金）　22:00～22:24

元サッカー日本代表の楢﨑正剛さんは守護神として4大会連続でW杯に出場。クラブでもJリーグ最多出場、GK初のリーグMVP獲得など輝かしい実績を残しました。今年1月に現役を引退。43歳となった現在は“GKを目指す選手を増やしたい”と若手や子供たちを指導する楢﨑さんの今に迫ります。

第78回：マンスリースペシャル

10月25日（金）　22:00～22:24

第75回から第77回までに登場した元フィギュアスケート選手・中野友加里さん、サッカー・岩渕真奈選手、元サッカー選手・楢﨑正剛さん。第78回は未公開シーンを含む3人の総集編をお届けします。

▶ 番組の詳細は、BS朝日「才色健美」公式ホームページへ