才色健美な挑戦者たちBACK NUMBER
「自分の武器はない」と語る
楢﨑正剛のゴールキーパー論。
posted2019/10/16 11:00
text by
林田順子Junko Hayashida
photograph by
Shigeki Yamamoto
W杯に4大会連続で出場し、J1歴代最多出場記録を持つなど、長いキャリアを築いてきた彼が自身の現役生活で見つけたGK像とは――。
GKは突出したものがあってはいけないというのが自分のスタイルであり、僕が理想とする姿でした。セービングやハイボール、足元のうまさなど、キーパーに求められる要素は色々ありますが、一つが秀でているのではなく、それらすべてを高いレベルでこなしていかなきゃいけない。
例えばフォワードみたいな選手や足元のうまい選手が出てくると、それがトレンドみたいになって脚光を浴びたりしますが、結局はやっぱりベーシックなところが大事だと思うんです。もちろん自分の武器はあってもいいとは思いますけど、僕はひとつの武器を磨くのではなく、満遍なくできることを目指していました。
迷いもあったキャプテン就任。
引退をしてから、若い頃のインタビュー記事を読んで、当時を振り返ることがよくあります。改めて読んでみると、今の自分とはちょっと違うな、考え方が変わってきているんだなと面白いですね。
例えば20代は経験を積み上げている段階。けれどもコーチや周りからは自信を持てと言われて、もちろんそういう気持ちで試合には臨んでいるのですが、自信なんてはっきり言ってまだそんなにないんですよね。でもポジション柄、自信がある雰囲気をしっかり出していかなきゃいけない。だから実際はそこまで思っていなくても、「自分が一番」というような強気な発言をしたりしていましたね。
僕は人をまとめるのが特別うまいとは思っていないのですが、20代の後半ぐらいからはキャプテンを任されるようにもなって。もともと僕が勝手に描いていたキャプテン像は、昔の柱谷哲二さんのような叱咤激励して、ぐいぐい引っ張っていくタイプ。一方で身近には、井原正巳さんとか、山口素弘さんのようなサッカーへの態度や姿勢を見せることで引っ張っていくタイプの方がいて。
最初にキャプテンになった時は、山口さんから受け継いだので、どうしたらいいのだろうかと山口さんに相談に行ったりもしました。でも結局は普段やっていることをやる。自分がベストを尽くす姿を見せることによって、周りは勝手についてくるんだということを感じられるようになって。特に何かをしようと考えなくていいんだと思えるようになりました。