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大坂なおみ、大阪での大きな優勝。
臨時コーチの父とのキーワード。
posted2019/09/24 19:00
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph by
Getty Images
大坂なおみが初めて世界的注目を浴びたのは、16歳のときのスタンフォードの大会。当時まだ世界ランク400位台の無名選手が全米オープン・チャンピオンのサマンサ・ストーサーを破った。
その記者会見で、「オオサカというファミリーネームと大阪とは関係があるのか」と聞かれてこう答えたという。
「大阪で生まれた人はみんなオオサカさんなのよ」
こうして大坂のお笑いセンスは広くメディアに披露されたわけだが、半ば信じた記者もいて、インタビュールームは微妙な空気が流れたとか。そして昨年の全米オープンの優勝会見で、また同じような質問が飛んだ。大坂はニヤリと笑ってこう返した。
「皆さん、準備はいい? 4年前と同じことをこれから言うわよ。大阪で生まれた人の名字はみんなオオサカなの!」
大阪で負けるという「アイロニー」。
当時を知る人たちは爆笑し、知らない人は戸惑った。「冗談よ」と大坂。北海道で出会ったハイチ系アメリカ人の父と日本人の母が、その後大阪に移り住み、姉のまりに続いてなおみが生まれた。なおみが日本で、大阪で暮らしたのは3歳までだ。複雑なバックボーンを笑いの材料にしていたのは、単に無邪気だったのか、それとも……。
以前、大坂は「私にとってのジョークはみんなの注意をそらすための防衛機能みたいなもの」などと意味深発言をしたことがある。
大坂は深く語れるほど大阪を知らない。しかし、遠く離れていながらずっと意識せずにはいられない町だった。だから、大阪で開催された先週の東レ・パン・パシフィックオープンであんなことを言ったのだ。
「私が大阪で負けるのって、なんか<アイロニー>よね」