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膝の手術発表直前に会心の本塁打。
大谷翔平は「研究者」である。
text by
田中大貴Daiki Tanaka
photograph byGetty Images
posted2019/09/14 20:00
9月12日(日本時間)、インディアンス戦に3番DHで出場した大谷は、弾丸ライナーでライトスタンドに本塁打を放った。
職人のように細かな調整作業。
9月9日からのインディアンスとの3連戦中はインサイドアウトを意識しながら、ボールの内側を狙い、バットの出を速くし、反応を良くしようとしているように見て取れた。ベストの形を求め、大柄な体つきとは裏腹に、まるで職人かのように細かな調整作業を続けていた。
3連戦の最終戦、弾丸ライナーで右翼席に運ぶ今季18号ソロ本塁打。打球速度は自己最速の183キロ。まさに糸を引くような低い弾道であっという間にスタンドに突き刺さった。
ダイヤモンドをゆっくりと回る彼の表情には確信があったように見えた。広角に打てる打者を理想形と考える大谷にとって今季18本目の一発は手応えがあったからだ。
「打撃の幅が広がる」「自然にバットが出る構えだった」「突発的に対応できた」と自らの本塁打を評した。
逆方向へのアーチが多い中で引っ張っての一本は打撃の引き出しが広がるという答えだった。
投手陣も大谷の探求心に舌を巻く。
何よりも「(相手投手の球種の中では)多い球種ではない」と分析していたスライダーを打てたのが大きいと表現していた大谷。日頃からの徹底したデータの蓄積と、対応力を高める練習を短い時間の中で組み立てた結果である。
二刀流のウォルシュだけではなく、クローザーのハンセル・ロブレスら投手陣も大谷の野球への探求心に舌を巻く。
「投げて、打つ。登板間隔の調整が難しいはず。ブルペン等でどう調整しているのか。どう身体をコントロールしているのか。彼の調整方法は一つの参考書になるよ」(ロブレス)
日本時代から時間の使い方を人一倍、重要視してきた大谷翔平。
日本ハムファイターズの栗山英樹監督も「翔平は18時にマウンドに上がる時には既に次の日の朝からのスケジュールを全て決めている」と話していたことを思い出した。