サッカーの尻尾BACK NUMBER
14歳で学校を辞めてサッカー漬け。
サラーの原点をエジプトでたどる。
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph byDaisuke Nakashima
posted2019/09/06 11:40
首都カイロや第2の都市アレクサンドリアの街中では、いたるところでサラーの顔が目に飛び込んでくる。
毎日5回、今も続く祈りの始まり。
シシニはある場所に連れて行ってくれた。
クラブ施設内にある、祈りのための場所だ。
「ここで祈っていたんだ。毎日、5回。今も続く、彼の根源にあるものだ」
薄暗い光が差し込む中に絨毯がひかれていた。一角に神秘の空気が浮かんでいる。
村長は言っていた。サラーは今でもコーランを持ち歩いていると。練習場で、スタジアムで、移動のバスの中で、1日5度彼はその書物を紐解き祈りを捧げる。スマートフォンにもコーランをいれているという。
信仰。サラーはそれをCL決勝の舞台でも包み隠さずに世界に誇示した。そこにあった思いは何なのか。
エジプトを訪れ、サラーの周辺をめぐった。ナイルの流れ、薄暗いスーク、ピラミッドのザラザラとした岩肌に、彼らの祈りが刻まれていた。
発売中のNumber985号では、モハメド・サラーの母国を訪ねて書いた「エジプトの祈りと泣き虫ハメダ」を掲載。ライターの豊福晋氏が、今回の記事でも登場した幼少期から少年期のサラーを知る人物から聞いたさらなる秘話や、前エジプト代表監督のハビエル・アギーレなど現地でサラー人気を実感する人々の証言を通して、世界トップクラスのアタッカーの知られざる一面を描いています。取材に同行した中島大介カメラマンの鮮やかな写真とともに、ひとりのサッカー選手を中心にイスラム世界で「宗教」と「スポーツ」が交錯するルポルタージュをお楽しみください。