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セリーナvs.ヒンギスの構図に似た、
大坂なおみとベンチッチの宿敵関係。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byGetty Images
posted2019/09/03 20:00
ベンチッチの完璧な試合運びの前に屈した大坂なおみ。逆に言えば、彼女にもまだまだ成長の余地があるということだ。
21歳のドラマはもっと奥深くなる。
ベンチッチは、この世代に才能豊かなプレーヤーが多くいることが認識されるはるか前から特別な存在だった。
16歳のときの全豪オープンでグランドスラム・デビューを果たし、同年、17歳になった全米オープンでベスト8に進出。19歳になる直前に自己最高の7位に到達。大坂はぶっちぎりで同世代のトップを走るベンチッチに追いつくことが目標だと、かつて話していたものだ。
そんなトップランナーが、2017年に左手首の手術で5カ月間戦列を離脱。ランキングは300位以下に落ちた。ベンチッチが復活の階段を上るのに必死だった2018年に、大坂はグランドスラム・チャンピオンへと上り詰めた。
「本物のアスリートはいろんな障害やケガや、苦しいときを乗り越えないといけない。そうやって、私もより強い人間、より強い選手になってきた」と言うベンチッチにとって、あの17歳のときの全米オープン以来となるグランドスラムの準々決勝進出が、大坂からの勝利によって果たされたことには大きな意味があるのではないだろうか。
大坂にとって、連覇がかかっていたこの大会と3月のインディアンウェルズの両方がベンチッチに阻まれたという事実もまた……。
連覇という目標には遠く届かなかったが、少なくとも「人として成長できた」という21歳のドラマがもっと奥深く、よりおもしろくなるのは多分これからだ。