One story of the fieldBACK NUMBER
佐々木朗希のいない決勝戦。
選手たちは納得していたのか。
text by
鈴木忠平Tadahira Suzuki
photograph byAsami Enomoto
posted2019/07/26 11:55
ベンチから試合をじっと見ていた佐々木朗希。この顛末の決着がつくのはずっと先の話になるだろう。
選手たちはいつか納得できるのだろうか。
巨大な才能を預かるという重圧を抱えながら、貫いた信念は素晴らしいと思う。投げさせないことの方がよほどの勇気が必要だったはずだ。高校野球における価値観、既存の大会運営に一石を投じたという面もあるだろう。
ただ、なぜかそこではなく、一生のうち二度とやってこない一瞬を「なぜ?」という表情のまま終えることになった選手たちにばかり目が向いてしまった。
試合の後、国保監督は全員に言ったという。「負けたのは俺の責任だ」。選手たちの胸にはどう響いたのだろうか。
もしも、彼らが自分ではどうすることもできない悔いを抱えたとしたら、それを払拭できるのは何年後のことになるのだろうか。佐々木がプロの世界で活躍するようになれば、それで払拭できるのだろうか。第三者がこの決断をどう評価するかなんてどうでもいい。他でもない彼らがいつか納得できる日がくればいいなと思う。
沿岸部の大船渡から2時間以上の道のりを毎試合駆けつけて、声援を送ってきた応援団席からも、父兄の間からも、こんな声が聞こえた。
「こんな終わり方って、ありますか……」
何か忘れ物をしたかのような空気に包まれた岩手県営球場に、一瞬の夏を生き尽くす蝉の鳴き声が響いていた。