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イタリアの夏の主役は“アズーレ”。
女子W杯躍進の裏に偏見の歴史。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2019/07/14 11:30
五輪切符は獲得ならずも、下馬評を覆したイタリア代表。主将ガマを中心とした強固な守備でW杯ベスト8入りを果たした。
「敗因は競技人口の差」
「今大会で私たちはイタリア女子の現在地に自信を持つことができました。敗れた夜は何度も夜中に目が覚めたけれど、冷静に考えれば強いチーム(オランダ)が勝った。敗因は競技人口の差です。オランダはイタリアよりずっと小さい国なのに総人口1700万人のうち女子の登録競技人口が16万人もいる。翻って(人口約6000万人の)イタリア女子の登録者は2万4000人しかいない」
大会後、指揮官ベルトリーニは毅然と語った。
「これから女子サッカー人口が増え、我々のセリエAへ関心がより高まれば、イタリア代表は必ず今より強くなります。メディアや国民の皆さん、この後もどうかアズーレを見守り続けてください」
指揮官は万感の思いで懇願した。20年ぶりの快挙を果たした女傑には早晩、連盟から契約更新のオファーが届くだろう。8月末には2021年のEURO予選が始まる。
今回の敗戦は未来へつながる。
20年前の女子W杯アメリカ大会のことを克明に覚えている選手は誰もいない。それでも、アズーレの戦いぶりはイタリア国民の心を打った。五輪の夢が散り、涙はあっても、悔いはなかった。
ここで倒れても、後に続く子たちがきっと現れてくれるから。彼女たちは、過去への思いも未来への希望も背負って戦っていた。
9月14日、新シーズンのセリエA開幕戦に、初めてサッカーの試合を見る少女ファンがどれだけ集まるだろうか。アズーレが見せた快進撃の本当の価値は、20年後にわかるのかもしれない。