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イタリアの夏の主役は“アズーレ”。
女子W杯躍進の裏に偏見の歴史。 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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posted2019/07/14 11:30

イタリアの夏の主役は“アズーレ”。女子W杯躍進の裏に偏見の歴史。<Number Web> photograph by Getty Images

五輪切符は獲得ならずも、下馬評を覆したイタリア代表。主将ガマを中心とした強固な守備でW杯ベスト8入りを果たした。

サッカー場がストリップ劇場のように……。

 極めつけは『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙のベテラン記者の回想だ。

「まだ中学生だった70年代中盤、ミラノで細々と行われていた女子のリーグ戦を友達と見に行った。そしたら入口で『14歳未満不可』と言われて入場を断られたんだ。どういうことだとグラウンドに忍び込んでみたら、理由はすぐにわかった。観客は大人の男たちばかりで、彼らは思いつく限り品のない野次と罵りで選手たちの身体的特徴をからかっていたんだ」

 まるで場末のストリップ劇場みたいに卑猥物扱いされた先達たちが、屈辱に耐えながら連綿とリーグ戦の歴史を絶やさなかったおかげで、80年代以降イタリアの女子サッカーは一度隆盛期を迎えた。

 ベルトリーニや代表歴代得点王パトリツィア・パニコといった名選手たちが次々に輩出され、彼女たちは後に指導者へと転身した。44歳のパニコ女史は現在、U-15“男子”代表監督を務めている。

「W杯に出た現代表チームへのジェラシーなんて毛頭ありません。むしろ彼女たちの活躍が、私たちの世代が払った犠牲や代償にきちんと意味があったことを証明してくれているのです。彼女たちの歩みは私たち代表OGにとって大きな誇りですよ」

欧州で沸き立つ女子サッカー。

 近年、FIFAとUEFAは女子サッカー振興へ一層力を入れ始めている。イタリアでも大規模なリーグ改革が行われ、長く全国アマチュアリーグ機構の管轄下だった女子セリエAが昨年から連盟の直轄になった。

 新規ファンと市場開拓を狙うユベントスが女子チームを設立し、昨季までスクデット2連覇を果たしている(現代表でもユーベ組は最多8人を占める)。今年3月には、男子チームの本拠地アリアンツ・スタジアムでフィオレンティーナとの大一番に臨み、3万9027人の記録的大観衆を集めた歴史的ゲームもあった。

 連盟には、主将ガマを中心に代表選手たちから、このアズーレ・ブームに乗じた女子セリエAの早期プロ化の訴えが届いている。

 ただし、拙速なプロ化には懸念も多い。昨年秋に就任した連盟会長ガブリエレ・グラヴィーナは、女子リーグのプロ化は中長期的目標の一つであるとしながら「まずはこのブームを競技人口増大につなげることが優先」と慎重姿勢を見せている。

【次ページ】 「敗因は競技人口の差」

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