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石川遼、奇跡のような日本プロ優勝。
1043日の空白にも情熱は失わず。 

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桂川洋一

桂川洋一Yoichi Katsuragawa

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photograph byKyodo News

posted2019/07/11 11:40

石川遼、奇跡のような日本プロ優勝。1043日の空白にも情熱は失わず。<Number Web> photograph by Kyodo News

日本プロゴルフ選手権で2016年以来、3年ぶりの優勝を飾った石川遼。15歳でツアー優勝した少年は今年の9月で28歳を迎える。

移動は電車に、本業以外の役割も増えた。

 空白の約1000日の後半は、本業以外の仕事でも多忙になった。‘18年1月、日本ツアーの選手会会長の任務を引き受け、事あるごとにツアー再興の旗振り役となってスーツ姿で全国を巡る。

 スタッフにまるで警護されるように歩いた10代の頃とは違う。スター然とすることなく、都内で会議に出席するときはひとり電車に乗って移動することも多くなった。「車だと渋滞するけれど、地下鉄なら時間を読みやすいから」と平然として言う。

 年を重ねてゴルフと、そしてゴルフ界と別の角度から向き合う時間が増える。その都度、技術だけでなく、自分たちを取り巻く環境のしきたりや、仕組み、制度や制約を知り、もどかしい思いも募る。

 理想に満ちた時代には思いもよらなかった苦労。ただ、コース内外でそれを味わっても、情熱だけは失うことはない。石川は自身とゴルフとの距離感について、キャリアを振り返ってこう語る。

「やっぱり、短いスパンで見たら一時的には前後、上下しますよね。“熱”みたいなものを(折れ線)グラフにして、ズームアップしてみたらすごくギザギザしていると思う。でも、俯瞰して見たら、ずっと高いところで安定しているんじゃないかな」

 待望の瞬間を引き寄せたのは、そう走り続けてきた自負そのものでもある。

「ただ勝てばいい」ではなく、帰るべき場所へ。

 厳しい見方をすれば、やっと掴んだタイトルもまだ復活への道筋ではあっても、その証とは言えないだろう。終盤、ライバルになったハン・ジュンゴンが71ホール目で池ポチャからダブルボギーをたたいて争いがもつれたこと、プレーオフでドライバーショットがカートパスを経由してビッグドライブになったこと……。粗探しをすれば、“重箱のスミ”みたいな要素はいくつも見つかってしまう。

 15回目の優勝はまだ、やはりどこか奇跡的で、過去に見せてきた強さが十二分に備わったものではなかった。満足に至らない点もきっと多々ある。それも、もう一度帰るべき場所、メジャーやPGAツアーでの飛躍を見据えていればこそだ。

 結果的に「ただ勝てばいい」で済ませることは、これまでのキャリアの否定にもなりかねない。

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