甲子園の風BACK NUMBER
甲子園の応援がコンサートになった!?
「ブラバン!甲子園ライブ」誕生秘話。
text by
梅津有希子Yukiko Umetsu
photograph byKYODO TOKYO
posted2019/06/24 08:00
舞台一杯に広がった吹奏楽、応援団などの出演者たち。観客と一体化した盛り上がりは、尋常ではない興奮を呼ぶ。
応援曲を演奏するだけのコンサートではない!
第2試合の日大三vs.習志野では、関東からバスで10時間かけて甲子園に駆けつけ、試合後はとんぼ返りの話から。
学校で練習し、その日の夜に再び甲子園に向かうといった移動の苦労話や、日大三のオリジナル曲『三高ドラム』を、高校野球応援での打楽器使用が禁止されている神宮球場バージョンと、打楽器OKの甲子園バージョンの2パターンを聴き比べたりと、マニアックなネタを披露するなど、「野球の応援曲を演奏するだけのコンサート」ではなく、さまざまなうんちくを盛り込むことも心がけた。
総勢500人による合同演奏は、オープニングの『栄冠は君に輝く』を習志野・石津谷氏が、後半の『アフリカン・シンフォニー』を東海大相模・矢島氏、アンコールのDA PUMP『U.S.A.』を横浜・立石氏に担当していただいた。
この合同演奏でも考えなければならないことがいろいろとあった。全校がティンパニやマリンバなどの大型打楽器を持ってくるとステージや舞台袖のスペースが足りないという問題があり、代表して習志野に持ってきてもらうことに。そして、なにせ500人いる上に、事前の合同練習はなく、本番当日のリハーサルで初めて合奏をするため、「ティンパニは1人で足りるのか」「足りなければバスドラムとスネアドラムで調整しよう」などといった細かい点も事前に打ち合わせを重ねた。
「踊れる男子を出してほしい」
アンコールの『U.S.A.』は、各校の男子部員たちに踊ってもらうことにした。DA PUMPが男性グループということもあるが、いま、全国的に吹奏楽部は圧倒的に女子が多い。「男子の存在感をアピールしたい」というわたしの想いもあり、ここは男子ダンサーにこだわった。各校に、「踊れる男子を出してほしい」と事前に頼み、「うちは5人」「うちは男子不足のため2人」などと人数調整。20人は並べたかったため、「ちょっと数が足りないなあ……」と思っていたところに、「うちは何人でも出せます」と習志野高校・海老澤博先生から頼もしい連絡が。さすが全校生徒の5人に1人が吹奏楽部という、全国屈指の部員200人体制を誇る習志野高校吹奏楽部である。
ダンサーたちにはDA PUMPの公式動画を見て練習してもらうことになったが、問題はチアである。HIP HOPのダンスを踊るよりは、やはりポンポンを使った振り付けで踊ってもらいたい。今回、チアの参加は日大三と東海大相模の2校。日大三のダンス部にお願いして振り付けを考えてもらい、事前に動画を撮ってもらって相模に共有し、同じ振り付けで練習を重ねた。
吹奏楽部同様、チアも事前の合同練習が一切ないため、このような苦労の末に何とか形になったという経緯がある。