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井岡一翔の緻密で美しい4階級制覇。
山中慎介、井上尚弥と違うスター性。

posted2019/06/20 14:45

 
井岡一翔の緻密で美しい4階級制覇。山中慎介、井上尚弥と違うスター性。<Number Web> photograph by Hiroaki Yamaguchi

序盤は押され気味の展開だったが、徐々に持ち味を発揮し始めた井岡。勝負に出た10回、パリクテを仕留めた。

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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Hiroaki Yamaguchi

 WBO世界スーパーフライ級王座決定戦が19日、幕張メッセ・イベントホールで行われ、同級2位の井岡一翔(Reason大貴)が同級1位のアストン・パリクテ(フィリピン)を10回1分46秒TKOで下し、日本人男子選手初の世界4階級制覇を達成した。

 ミニマム級から階級を上げて4階級制覇に挑む井岡と、バンタム級やスーパーバンタム級で戦った経験を持ち、体格とパワーが自慢のパリクテとの一戦。

 井岡の立ち上がりは満点というわけにはいかなかった。

「思ったより距離が遠く、懐も深かった。左のリードも思ったより伸びてきて、始まったときはやりずらかった」

 前半が強いと目されたパリクテはジワジワとプレッシャーをかけ、長いリーチからジャブ、右のカウンターを繰り出す。井岡はこれをわずかにもらった。初回の採点は3ジャッジともパリクテを支持した。

機能し始めたインサイドワーク。

 ここで焦らず、生命線であるジャブを軸にじっくり組み立て直させたのは、30歳になった井岡のキャリアだろう。まずは相手のパンチを外すことを優先し「我慢比べのような」(井岡)3ラウンドを終えると、4ラウンドに転機が訪れる。

 パリクテがしびれをきらしたか、もともとエンジンをふかす計画だったのか、わずかに攻勢を強めると、井岡が持ち味を発揮し始めた。「距離感をつかんだ」。真骨頂であるインサイドワークが機能し始めたのだ。

 パリクテのパンチをポジショニングとダッキングで絶妙にかわし、素早くサイドに回り込んでワンツー、左ボディを打ち込む。

 “神の左”山中慎介の踏み込みとも、“モンスター”井上尚弥の爆発力とも違う。

 井岡の作り出す小宇宙は、豪快さとも、派手さとも無縁でいながら、いつも緻密で美しい。

【次ページ】 井岡が覚悟を決めた瞬間。

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