ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
井上尚弥はまるでマイク・タイソン。
長期戦の予想をあざ笑う2R衝撃KO。
text by

渋谷淳Jun Shibuya
photograph byHiroaki Yamaguchi
posted2019/05/20 11:45

数発の被弾で、ロドリゲスの心は完全に折れていた。井上尚弥の異次元さは加速している。
長谷川穂積は早いKOを予言していた。
そんな状況で井上は2月、1カ月にわたってスパーリングを自粛。さらに小学生時代からともにトレーニングを積んできた真吾トレーナーとのミット打ちを復活させ、初心に返ってイチから立て直しを図った。結果的にこれが功を奏した。
試合前、イギリスで試合をすることの効用を話していたのは、元3階級制覇王者の長谷川穂積さんである。
「今回の試合は海外だから安心感がない。いつもと違いますからね。これが日本で防衛戦だとマンネリになってしまう。勝ちますよ井上選手、前半で。僕の予想、絶対に当たりますから」
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名王者の慧眼やおそるべし。いずれにしても2度目の海外、初めてのイギリスという舞台がほどよい緊張感を生み、プラスに作用したというのも、こうなってみるとうなずける話だ。
ドネアは相手になるのだろうか。
今回の試合は、井上がいままでにないほどの大きな重圧を乗り越えたというところに大きな意味があるだろう。
「ちょっと吹っ切れた感はありますよね。(今日のフィニッシュは)重圧がちょっとくだけたようなシーンだったので喜びが爆発しました。次はもっと早くという期待? もう開き直るしかないでしょう(笑)」
WBSS決勝の相手は5階級制覇のノニト・ドネア。その強打から“フィリピーノ・フラッシュ”の異名を持ち、かつてアメリカのリングでも活躍したビッグネームは、さらにたくましさを増した井上の相手になるのだろうか。そう思わずにはいられない圧巻のファイトだった。
