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ロシア女子に贈る「マラディエッツ」。
重鎮タラソワ、インタビューの裏側。
text by
栗田智Satoshi Kurita
photograph byOlga Skorupskaya
posted2019/04/24 08:00
カフェで取材に応えるロシアフィギュア界の重鎮タチアナ・タラソワ。インタビューの最後を笑顔で締めくくった。
日本でも定着しつつある「マラディエッツ」。
とくに女子シングルに関しては、低年齢化が進み、育成スピードが速まっている。そうした時代の流れにあることは事実としても、コーチみんながエテリ・トゥトベリーゼのスタイルを踏襲する必要はない。選手と同様、さまざまなアプローチがあってしかるべきと語る。
注目選手や時のコーチをこぞって持ち上げたり、選手同士やコーチ同士を何かにつけて比較したり、ともすればライバルに見立てて煽るような風潮。たしかにそれもスポーツのひとつの見方ではあるが、何かタラソワ先生に、行き過ぎのないよう諭されたような、雑音で事を荒立てたりしないよう釘を刺されたような、そんな気がした。
来シーズンの展望について具体的に話を向けた際も、「私は占い師ではないので、未来のことはわかりません。フィギュアスケートを楽しみながらコメントしたい、ただそれだけです」と答えるにとどめた。やさしく微笑みながらも、眼光は鋭いまま。発言の影響力の大きさを考えてのことだろう。
選手の頑張りには愛情たっぷりに賛辞を送り、ときに立場の弱い選手を守るために奔走する。その一方でフィギュアスケート界全体のことを考え、つねに目を光らせている。こうしたゴッドマザーのような存在がいることがまた、ロシアの強さの理由かもしれない。
インタビュー終わり。日本の一部ファンが熱のこもった独特のタラソワ解説を楽しみにしていること、ほとんどの日本人はロシア語を解さないながらも「マラディエッツ(よくやった、えらい)」は知られるようになったことを伝えると、「ありがとう。今度解説するときは“マラディエッツ”を多めに言うことにしましょう(笑)」とうれしそうにしてくれた。