野球善哉BACK NUMBER
西武・高橋光成の話し方が変わった。
結果と原因に「なぜ」を探す思考力。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byKyodo News
posted2019/04/19 08:00
ドラフト1位、5年目、西口文也の背番号13を継承。西武が高橋光成にかける期待はとんでもなく大きい。
なぜそのトレーニングをやるかを考える。
球速を速くするために体を大きくするのではなく、全体的なパフォーマンスを向上させることを目指すうちに全てが変わっていった。いかに正しく体を使いこなすかについての理解を深めたことが始まりだったのだ。
高橋のトレーニング指導を行っているのは、菊池のパーソナルトレーナーでもある清水忍氏である。「トレーニングをしたからと言って、野球が上手になるわけではない。しかし、練習ができるための土台ができる」と語る清水氏は、自主トレーニングなどを通して菊池や高橋に必ず説明することがあるという。
「例えばフルスクワットのウェイトトレーニングひとつでも、なぜそのフォームなのかを話します。それをやるとどの能力が上がるのか? と。『なぜなのか』という問いかけは、いわば根拠の提示です。その重量を使う根拠、その回数をやる根拠。そのフォームでやる根拠です。メニューの順番も、なぜこの練習を先にやるのか、また別のメニューが後回しなのかを全て説明しながらやっています」
地面がなければ、力は出ない。
そんな清水氏のトレーニングの根幹をなすのが、地面の力を使って動作レベルを上げるという考えだ。
「人間の体がなぜ動くのかというと、何もしなければ、慣性の法則が働いてその場にいるわけですが、前に進もうとするには力を入れなければいけない。『走る』とは、つまり、地面を押す力なのだということです。これは腕立て伏せに置き換えても同じで、腕立て伏せができない人は、その理屈が分かっていないんです。腹筋を意識して、地面を押すイメージでやってみてごらんと伝えると、みんなができるようになります」
ウェイトトレーニングでは、いかに地面の力を体で受け止めて、重量を上げていくか。それをしていくことで、適切な動作を高いレベルでできるようになる。
菊池はそうやってパフォーマンスを高めてボールの質を上げたが、高橋には地面の力を投球フォームにつなげていく過程で欠点があった。
投球動作をするときに右足が折れてしまうことについて、「癖といってもいいかもしれない」と高橋本人も嘆いていた。右足が曲がってしまうので、地面の力が正しく伝わらない。自分の癖を意識できているときは修正できるのだが、ピンチを背負うなど余裕がない状況になると、その癖が出てしまうのだ。