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米ツアー3勝のゴルファーが口にした
「もっと稼ぎたい」という言葉の真意。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byGetty Images
posted2019/04/05 07:00
世界ゴルフ選手権シリーズを初制覇したケビン・キスナー。小さな町のヒーローはオーガスタの舞台でどんなゴルフを見せるか。
「モチベーションはマネー」という見出し。
苦節5年を経て、ようやく米ツアーに辿り着いたのは'11年。それからさらに5年後の'16年にRSMクラシックでようやく初優勝を挙げ、翌年、ディーン&デルーカ招待で米ツアー通算2勝目を達成。
そして先週、マッチプレー選手権を制してビッグタイトルを手に入れ、彼の獲得賞金総額は1870万ドル(=20億円超)へと膨らんだ。
米メディアは、かつては無名で今でも地味と見なされているキスナーが「こんな大金をもらえて夢見心地です」と有頂天で反応することを期待していたのかもしれない。
だが、彼の反応は、まったく逆。
「まだまだ足りない。もっと稼ぎたい」
その言葉尻だけを捉えたのだろう。「モチベーションはマネー」という見出しが躍っていた。
私利私欲のための稼ぎではない。
キスナーが「もっと稼ぎたい」と思っているのは本当だから、「モチベーションはマネー」はウソではない。
だが、もっと稼いで豪華絢爛の暮らしをしたいとか、プライベートジェットを購入したいとか、そういう私利私欲のために「もっと稼ぎたい」と思っているわけではない。
キスナーの故郷アイケンの町とその周辺エリア一帯には、経済的困窮などの理由で小学校に入学するまでの間に何ひとつ教育を受けられない0歳から5歳までの子供たちが1万人以上もいるという。
「プロゴルファーとしてのキャリアを開始して以来、この地域の子供たちをサポートすること、そのための財団を創設してチャリティ活動を行なうことは、僕のパーソナル・ゴールになっている。子供たちみんなに輝いてほしいんだ」
プロになろうと決めたとき、父親が授けてくれた軍資金があったからこそ、キャリアを踏み出すことができたと感謝しているキスナーは、どんな活動にも元手や軍資金が必要であることを痛感し、故郷の地域を最大限に援助したい一心で、「もっと稼ぎたい」と意欲を燃やしている。