ブックソムリエ ~新刊ワンショット時評~BACK NUMBER
学びの根源はすべての競技に通じる。~チェス王者が太極拳に出会って得たもの~
text by
幅允孝Yoshitaka Haba
photograph byWataru Sato
posted2015/09/21 06:00
『習得への情熱―チェスから武術へ―』ジョッシュ・ウェイツキン著 吉田俊太郎訳 みすず書房 3000円+税
チェスはスポーツなのかと問われれば、間違いなく僕は頷くことになる。特にこの本の読後ならば尚更だ。
ある少年がチェスにのめり込み全米チャンピオンになるまでを描いた映画『ボビー・フィッシャーを探して』。本書『習得への情熱』の著者ジョッシュ・ウェイツキンは、そのモデルとなった人物だ。
チェスの神童と呼ばれ、映画のブレイクと共に一躍時の人となったジョッシュ。父の目線で語られた映画の原作本はあるのだが、あの神童の瞳が実際に見つめていた風景が語られる点でも興味深い。
しかしながら、この本はジョッシュの来歴を追うだけではない。何かを学ぶということの根源をあぶりだそうとする学習論でもあり、人の認識について驚くほど深く洞察したケーススタディでもある。