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文豪と犬一匹が出会った、「真のアメリカ」の姿とは。~『チャーリーとの旅』を読む~
text by
馬立勝Masaru Madate
photograph bySports Graphic Number
posted2015/10/06 07:00
『チャーリーとの旅』ジョン・スタインベック著 大前正臣訳 サイマル出版会(現在絶版)
アメリカの事を書きながら、長い間自分の国に触れてこなかった。記憶だけで書いてきたのは作家として「犯罪的行為」だ。そう考えた作家は車に乗って“アメリカ再発見”の一人旅を決行する。小型トラックをキャンピング・カーに改造してドン・キホーテの愛馬と同じ「ロシナンテ」号と名付けた。お供はサンチョ・パンサならぬ青毛の老プードル犬「チャーリー」だ。1960年9月ニューヨークを出発した旅は、反時計回りにアメリカを一周、38州、行程1万6000km余を4カ月で走った。
大都市は避けた。小さな町、田舎、森林地帯、草原、荒れ地で“草の根のアメリカ人”に出会い、その姿と生の声にアメリカの姿を求めた。体調を崩したチャーリーをいい加減な診断で扱う獣医もいれば、親身になって治療する獣医もいた。規則の杓子定規で作家を不快にする税関吏もいれば、親切に道案内してくれる警官もいる。行きずりに言葉を交わした人々の姿、性格までもが簡潔な描写なのに生き生きと迫ってくる。