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「記事の中から現場の匂いが……」
報道を巡る新聞記者の怒りに触れて。 

text by

安倍昌彦

安倍昌彦Masahiko Abe

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photograph byHideki Sugiyama

posted2019/01/08 10:30

「記事の中から現場の匂いが……」報道を巡る新聞記者の怒りに触れて。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

スポーツをめぐるメディアの報道方法は、ネットの登場によって大きく変化してきた。この過渡期に終わりはあるのだろうか。

こんなことやってたら、いつか……。

 僕の記事もそう読めますか? と問うてみる勇気もなく、自分には身に覚えのないことでも、世の中というものは何かと「一事が万事」である。1人いれば、みんながそうだと解釈されてもしょうがないのかもしれない。

「それだけは、やっちゃいけないでしょう。それじゃ、単なる“伝聞”じゃないですか」

 講釈師、見てきたようなウソを言い。

 昔の川柳が頭に浮かんだ。

「ライターってハタから見ると、取材して、記事書いて、発信して……表面上、自分たちと同じような仕事してるわけですよね。だから自分たち新聞記者も、同じだと思ってる人がいるんですよ」

 その記者さんは、ある人から同じように気楽な稼業だねと言われ、いたくショックを受け、傷ついたという。

「こんなことやってたら、いつか世の中から“ライター”って仕事、なくなりますよ。職業として見損なわれますよ。マジメにやってたら、結構たいへんな仕事じゃないですか」

 わかってくれているようで、ちょっと安心する。

「生活できないって廃業したのも、何人か知ってるし……世間からリスペクトされるような仕事、やりましょうよ!」

試験も資格もない職業。

 私たち“ライター”という職業は、確かにある種の「いいかげん」な存在なのかもしれない。

 誰の審査を受けることもなく、いわんや国家試験も資格試験もなく、その分野の見識があろうがなかろうが、社会に記事を発信する能力と気迫があろうがなかろうが、名刺を刷って「ライターでござい!」と名乗りを上げれば、そこでもう「ライター」が1人、誕生してしまう。

 もちろん、その後に活躍の場があるか否かで淘汰もされていくのだが、金銭的な余裕さえあれば、何年かはその世界にとどまることもできる。

 そのようなあやふやな基盤しか持っていないから、以前まだ多くの人が公衆の場でタバコをくゆらせていた頃には、「100円ライター」とか「使い捨てライター」などと呼ばれて、ずいぶんと泣きそうになったこともある。

【次ページ】 見てないものは語れない、というルール。

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