ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
松山英樹の誤球騒動と895万円。
それでも当事者と後輩が得たもの。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byYoichi Katsuragawa
posted2018/11/23 09:00
松山英樹(右)とは大学時代の先輩・後輩の関係に当たる比嘉一貴。
2人が出会ったのは6年前の秋。
比嘉は松山が目をかけている後輩のひとり。ダンロップフェニックスも開幕2日前に練習ラウンドをともにした。
「出場が決まってすぐ、電話がかかってきたんです。一緒に回ろうって」
誘いを断るわけもない。
「松山さんは覚えているか分からないですけど」
彼らの出会いは6年前の秋、沖縄・那覇GCで行われた日本オープンでのことだった。松山は当時まだアマチュアながら、その1年前にツアー優勝を果たし、2年続けてマスターズにも出場していた。
当時高校2年生の比嘉が練習場で打ち込んでいたときだった。沖縄のゴルフ場に多いティフトン芝は、松山は今でこそ米国で接する機会が多くなったが、日本でプレーしていた時代は不慣れだった。
「どうやって打つの?」
沖縄で生まれ育った比嘉だと分かるなり、「どうやって打つの? 教えてよ!」と声をかけてきたという。
「(自分は)いやいや、いやいや……って感じですよ。松山さんはもちろん、僕たちにとってはスーパースターだった」
大学進学後は付き合いがより深くなった。ただそのたびに、先輩の実力を肌で感じることも多くなった。
比嘉は「僕は松山さんが今、本調子じゃないのを分かっている」と言う。忘れられない衝撃がある。'16年の三井住友VISA太平洋マスターズ。松山はその直前、中国での世界選手権シリーズを制したばかりで、世界を席巻していた時期だった。
予選同組でプレーした先輩は、最終的に2位に7打差をつけて圧勝。比嘉は「あそこま行かないといけないんだ」と驚愕したのと同時に、「あれでも世界一になれないのかという感覚がありました。松山さんは(世界ランクで)2位まで行きましたけど、あれよりヤバイやつがいるのかよ……って」と遠い目で世界の果てを想像を巡らせた。