マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
甲子園で1番「暑い」のは誰か。
選手、審判、カメラマン、応援団。
posted2018/08/09 07:00
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Hideki Sugiyama
全国高校野球選手権大会第100回記念大会が、いよいよ幕を開けた。
今年の7月以来の暑さは異常気象らしいが、そんなことはものともせず、全国の予選を勝ち抜いた精鋭56校が熱戦を繰り広げ、その熱気にあおられるように、猛暑、炎暑なにするものぞ! と熱心な高校野球ファンたちが早朝から「甲子園」に集う。
この夏から、ネット裏の内野席が「指定席」になった。そのぶん、チケット売り場に延々と伸びる「チケット難民」の列は少なくなったが、それでもダグアウト上方の内野席は今でも「早い者勝ち」なので、朝5時過ぎの一番電車でやってくるファンの波はあとを絶たない。
大会はまだ始まったばかりなので、熱戦と奮闘する選手たちの様子は次回以降ということにして、ちょっと違った角度から話を始めてみたい。
今年の甲子園は、確かに暑い。
東京の暑さだってかなりのものだったから、なんとかなるだろうとタカをくくって来てみたが、伊丹に着いて甲子園行きのリムジンを待つ15分で、もう心が折れた。
人には、“慣れる”というありがたい機能が搭載されている。
自分の原稿にも何度か使っているフレーズを胸の中で繰り返し、それでもダメなら、球場隣りの商業施設に逃げ込んで……なんとかやり過ごすしか仕方ない。
記者や選手ももちろん暑いが。
ならば、甲子園で一番暑いのはいったい誰なのか?
私たち「記者」はまだマシである。定位置の「記者席」はネット裏大鉄傘の下で、おおむね日陰になる。
午前中の風がやむ時間はたまらないが、お昼を過ぎて風が通るようになると、まあまあ「いられる場所」になる。
グラウンドの選手も、もちろん暑い。
確かに暑いが、彼らは夢中だ。自分が球児の頃を思い出してみても、カンカン照りの記憶はあるのに、暑くて参った覚えがない。
今の甲子園は、ダグアウトの中にエアコンが備え付けられているとも聞く。なにより、2時間前後の間に9イニング闘う結構忙しいスポーツだから、暑さを味わっている暇などない。