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ミランをミラニスタの手に取り戻せ。
レオナルド復帰による再建の希望。
posted2018/08/08 11:00
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
Getty Images
「ミラニスタ」という言葉には、ミランのファンという第一義に加えて、ミランの所属選手やOBという意味がある。
“ミランをミラニスタの手に取り戻す”。
夏の間、このスローガンが象徴的にくり返されたのには理由がある。
中国人オーナー会長のあっけない失脚と米国ヘッジファンドへの経営権移譲。UEFAヨーロッパリーグ(EL)の出場権剥奪と再獲得。1年限りで出て行った主将ボヌッチと入れ替わりでやってきた大砲イグアイン。
クラブ創設119年の夏、ミランを取り巻く環境は激変した。その渦中、1人のミラニスタが古巣の中枢に帰ってきた。
現場を統括するテクニカル・ディレクター(TD)として名門再建に取り組むのは、レオナルド・ナシメント・ジ・アラウージョ。かつて選手や監督、フロントとして活躍した、あのレオナルドだ。
中国人実業家から、アメリカ人の手に。
「ミランは私の人生の大事な一部だが、また戻ってこれるとは思っていなかったから興奮している。このクラブは世界のトップに返り咲かなくてはならない。新経営陣の考えは明快だ」
過去数年にわたって開幕前に唱えられた名門再建のかけ声は、シーズンの終了とともに中途半端な失望に変わり果てた。だが、ミラン復活は今度こそ現実のものになるかもしれない。
2018年7月10日は、クラブ史の大きな転換点となった。
李勇鴻(リ・ヨンホン)前会長は、米国ヘッジファンド「エリオット」が立て替えていたクラブ株増資用資金3200万ユーロを返済期限までに用意できず、抵当に入れていたクラブ経営権を差し押さえられた。
早い話が、怪しい中国人実業家が持っていたミランをアメリカの高利貸しが借金のカタにぶん取った、ということだ。
“チャイニーズ・ミラン”は呆気なく終焉のときを迎えた。