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1回戦の頂上対決で大阪桐蔭に惜敗。
挑戦者に徹した作新学院の積極戦術。 

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氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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photograph byKyodo News

posted2018/08/06 17:30

1回戦の頂上対決で大阪桐蔭に惜敗。挑戦者に徹した作新学院の積極戦術。<Number Web> photograph by Kyodo News

近年ふたたび甲子園での存在感を増している作新学院。大阪桐蔭に敗れはしたが、彼らは確かに頂上を意識していた。

次々に先手を打ってピッチャーを投入。

 小針監督は継投についてこう語っている。

「目先を変えるのは試合前から考えていた事でした。投手はそれぞれ投球の感覚が異なりますし、先発の高山は右投手で佐取は左。バッターの狙いを難しくすることも考えて、右、左という順番にしました。佐取は思ったより長いイニング踏ん張ってくれた」

 相手先発の柿木蓮が1人で好投を見せた大阪桐蔭に対し、なんとか起用法で状況を打開していく。小針監督は先手を打つことで試合を動かそうとしていたのである。

 8回表、2死を取られたところで、小針監督は好投の佐取に代打を送った。

 その裏の大阪桐蔭の攻撃は上位打線だったが、「ワンアウト、ツーアウトからでも走者が出ればワンチャンスで流れが変わるかもしれない」と積極策に出たのだった。

 しかしこの攻撃が無得点に終わると、8回裏は大阪桐蔭に上手く攻められた。

 交代でマウンドにあがった林勇成が先頭の宮崎仁斗に四球を与えると、犠打と捕邪飛で2死二塁とするも、4番の藤原恭大に右翼前安打を浴びた。

 作新学院の右翼手・横山は猛チャージをかけて本塁の補殺を狙いにいったが、ボールを後逸。打者走者の藤原が生還し、2失点を喫したのだった。

2年前の夏の覇者として。

 8回も左腕の佐取を続投していれば……横山が慎重な守備を進めていれば……。

 結果からはいろんなことを語れるが、小針監督が試合前から「決戦」と覚悟を決めて攻める采配をしてきたことを考えれば、責められるものではないだろう。

 8回表の佐取への代打は流れを変えようとしたものであったし、横山の失策も彼は本塁を刺しに行こうと積極性を出したものだ。そもそも1回表に、横山はいきなり左翼前安打を放つことでこの試合の空気ができあがったともいえる。

 作新学院vs.大阪桐蔭は大会屈指の好カードなのはもちろんのこと、2年前の夏の覇者とセンバツ連覇中の両校の戦いは、いまの高校野球界をリードするチーム同士の対決でもあった。

 どちらが王者で、どちらが挑戦者なのかもわからない両者の関係の中で、チャレンジャーの立場に回った作新学院の果敢な仕掛けがこの好カードを一段と面白いものにしたのだ。

【次ページ】 最後の最後まで大阪桐蔭を追い詰める。

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