マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
高校野球の私立弱体化と、ある見解。
「殴られて育った兵士的な強さが」
posted2018/07/30 07:00
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Kyodo News
長野県予選の準々決勝で、「本命」と目されてきた松商学園が敗れる波乱が起こった。
松商学園が敗れた相手は、岡谷南高。松商学園のある松本市からJR・中央線で東京に向かっておよそ30分。諏訪湖に面した風光明媚な静かな町にある、ごく普通の“公立校”と聞いている。
このあとの準決勝、決勝が連戦になるから、今日はエースじゃないかもな……そんな予感が、球場に着いてピタリ当たっていた。
松商学園・直江大輔投手はシートノックのサポート役でグラウンドにいた。先発なら、この時間はブルペンで肩を作っていなければならない。
エース直江の“怒り”を感じる腕。
試合が始まって、先発、2番手の投手が岡谷南打線に攻め込まれる。エースの代役として必ず勝たねばならない心の重圧は、絶対的エースとしてマウンドを守るより、さらに大きなプレッシャーになるようだ。
ボール、ストライクもはっきりして、まっすぐしかストライクにならなければ、相手だってベスト8まで勝ち上がってきたチームだ。
エースを当ててもらえなかった屈辱感が2倍の闘争心になって、最初の4イニングで5点を奪い、さらに追加点! の勢いまでも感じさせていた。
2対4と2点リードされた4回、無死一、二塁でリリーフのマウンドに駆け上がってきたエース・直江大輔は、いつもとはちょっと違う雰囲気を発していた。7球の投球練習から、目に見える“覇気”があった。腕の振り、いや、腕の叩きに“怒り”があった。