太田雄貴のEnjoy FencingBACK NUMBER
太田雄貴が見たフェンシング世界大会。
日本勢メダルなしも将来性はある。
text by
太田雄貴Yuki Ota
photograph byKyodo News
posted2018/08/01 07:30
女子フルーレは、健闘を見せて団体5位。国内にライバルがひしめき合う状況が全体の競技力を押し上げている。
過半数を獲る戦いが必要だった。
選挙ですから、票読みを行い、時々刻々と変わる状況を見極めながら、さまざま関係者にアプローチをしていって、過半数を獲る戦いをしなければならなかった。
我々はその過半数をとるための活動を、十分に行うことができていたか。
残念ながら、できていなかった、と思わざるをえません。
正直に言えば、そういった交渉ごとに長けた人材が、協会にはあまりいなかったのかもしれません。
そこでわれわれは、ある意味「正々堂々」と戦うことしか出来ませんでした。自分たちのベストを尽くそうと。寝る間を惜しんでプレゼンテーションの準備をしてくれたスタッフもいました。
私自身も、FIEの中にいたのですから、注意深く周りを探り、情勢を見極めることがもっとできたかもしれない。そう思うと、今になっても少し悔しさがこみ上げてきます。
また、私たちは福岡大会で、ピストとその周りを史上初の全面LEDパネルにする、という演出を考えていましたが、無錫の組織委員会もまた、同じことを考えていました。今、世界中で一番安価にLEDパネルを使うことができるのは、まさにその中国。今回、実際に現場に行きパネルを見ましたが、とてもよくできていました。今年無錫で実現できたこの形を、2020年に向けてどう発展させていくか、これからいろいろと考えていきたいと思っています。
日本は「4強」に次ぐ5番手。
さて、今大会の日本人選手の活躍について。
残念ながら個人戦では苦戦が続いてしまいましたが、日本代表の競技力は現在、世界トップに並ぶレベルへと近づいています。
2015年、男女合わせて個人6種目の世界ランク32位以内に、日本人選手は3名いました。私も含めての3人、です。
それが2017年には、17名がランクインしました。これは、フェンシング発祥の地であるフランス、育成システムがしっかりしているイタリア、メダル量産種目として国を挙げての強化が進む韓国、そして現フェンシング連盟会長ウスマノフ氏の下、さらなる強化を進めているロシアの「4強」に次ぐ5番手という位置付けとなります。
世界のトップに立つための準備を、ここ数年しっかり続けてきたことの現れ、といえます。