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ブーイング覚悟で選んだ「敗戦策」。
西野監督の決断がもう1戦を生んだ。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byTakuya Sugiyama/JMPA
posted2018/06/29 12:45
アトランタ五輪では「1次リーグで2勝したのに決勝Tへ行けない」という史上初の事例となった西野ジャパン。22年後、西野監督は借りを返した。
「信条では納得できなかったが、遂行させた」
日本にとっては、2大会ぶり3度目の決勝トーナメント進出である。5カ国が出場したアジアからは、唯一のベスト16入りである。
何よりも、5月21日に立ち上げられたばかりのチームが、グループ内のFIFAランキング最下位のチームが、W杯でアジアの国として史上初めて南米のチームを破り、セネガルとスリリングな撃ち合いを演じて2位に食い込んだのだ。ポーランド戦で勝ち上がりを最優先したからといって、外国メディアの論調をそのまま受け止める必要はない。
誰よりも不本意だと感じているのは、他でもない西野監督である。
「攻撃的に、アグレッシブに戦ってきた1戦目と2戦目を考えれば、この3戦目で何としても決勝トーナメントへ勝ち上がるにあたって、この選択はまったくなかったものです。自分の信条では納得できなかったですが、選手に遂行させました。ブーイングを浴びながら選手たちにプレーさせたことは、自分の信条ではない」
トーナメントでこそ見える世界の神髄がある。
だとすれば、西野監督はなぜ自らの信条を曲げたのだろう。
W杯のような国際大会では、勝ち上がることで目に見える景色が変わっていく。グループリーグの3試合だけでは、世界のトップ・オブ・トップの神髄に触れることはできない。負ければ終わりのノックアウトステージを戦うことで、自分たちに何ができて何ができないのか、何が通用して何が足りないのかが測れるのだ。
7月2日の決勝トーナメント1回戦で、日本はベルギーと対戦することになった。テストマッチではここ数年で何度も顔を合わせているが、負けて失うもののある真剣勝負は初めてだ。
決勝トーナメントへの布石は、すでに打たれている。ポーランド戦で前2試合からスタメンを6人も入れ替えたのだ。
西野監督は「総合的な判断で、勝ち上がることを前提にした」と説明しつつも、「3戦目で目に見えない疲弊をしている。おそらく選手たちが相当ダメージしていて、フィジカル的にも感じるところがある」との見方を示した。