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63歳中嶋常幸のメジャー卒業宣言と
ジャンボへの遺言「棄権はいけない」。
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2018/06/07 08:00
中嶋常幸は「同伴者に迷惑をかけないのが精一杯」と日本選手権最終ラウンドの後に語った。その心中はいかほどか。
ジャンボは応援したいが、棄権は「いけない」。
永久シードの重さという言葉が出た。中嶋が同じく永久シード保持者の尾崎のことをどう見ているのか聞かずにはいられなかった。
「応援したいぐらいの気持ち。スコアが悪くても恥ずかしがることはない。なんか言う人がいるとすれば、それは違うと思う。(永久シードは)自分で勝ち取った権利じゃない。これから挑戦しつづけていくジャンボは、ジャンボの価値観でやっていく。いいんじゃない? 俺は、その道は選ばないけど」
ただ、尾崎の度重なる棄権に対しては批判的だった。
「こう言ったら悪いけど、棄権することはいけないことだと思う。棄権するぐらいなら出ないで、若い選手に(出場)枠を譲るべき。それが永久シードの務め。出るなら2日間でもしっかり完走すること。ボールが当たったとか、下痢が止まらなくなったとか、不慮の事故で棄権するのはいいけど、体のどこかが痛いから棄権するというのはよくない。それははじめからわかってることだから」
「ゴルフから離れるってことは、たまらないこと」
その尾崎は今季、3戦目にして初めて完走した。だが成績は2日間で14オーバー、122位に沈んだ。
中嶋は、「卒業」を決断できない尾崎の心情をこう汲み取る。
「まあ、ジャンボも俺もそうだけど、ゴルフしか能がないの。そのゴルフから離れるってことは、たまらないことなの。それだけは事実だね」
たまらない――。
卒業式がしめっぽくならないよう、つとめて明るく、ひょうきんに振る舞っていたが、それが中嶋の本音だった。