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米国から見た日大アメフト部問題。
NFLでは告発者にセカンドチャンスが!
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph byKyodo News
posted2018/05/24 14:30
選手が記者会見を開いた翌日、急遽、監督・コーチ側の会見が。内田正人前監督、井上奨コーチの悪質反則指示は改めて否定された。
このボーナス制度でスーパーボウル出場権を獲得?
セインツでは、ロッカールームの入り口に用意されている入れ物にスタジアム入りした選手たちがそれぞれ現金を入れ、そこからボーナスが支払われていたとのこと。
ベテラン選手が率先してこの行為を行い、若手選手に「ボーナスに見合うプレー」をするように煽ることもあったと言う。さらに、プレーオフの時期にはこの金額が倍以上に膨れ上がるよう高額に設定されていたという。
これらの行為は、暗号化されたメールやチームのプレゼン資料として残っていたのだ。
ちなみにセインツは2009年シーズンのスーパーボウルで勝利を挙げているが、シーズン中は相手チームの特定の選手を執拗に狙ってタックルし、怪我をさせるプレーが多発していた。
このボーナス制度で選手たちの士気が高まり、スーパーボウル優勝につながったのであれば、かなり残念な結果だと言える。
関係者は今もコーチ陣としてNFL界に。
同チームは2006年からショーン・ペイトンが監督をしているが、メールやチーム資料により、ペイトンもこの制度を知っていたことが証明されている。本人は否定したが、NFLコミッショナーはその供述を却下し、2012年4月から2013年1月までの資格停止処分を下したため、2012年シーズンはペイトンは指揮をとることはなかった。
しかし翌シーズンにはあっさりチームに復帰。
ペイトンが今も監督としてNFL史上最高年俸を受け取ってセインツを率いているという事実には驚きしかない。
また首謀者と言われるウィリアムスは2011年にチームを離れたが、その後もNFLチームで守備コーチなどに携わっているほか、関わった選手たちの処分は、短くて3試合の出場停止、長い選手でも1年という裁定だった。
コーチ主導でこのような制度を実施し、相手選手を執拗に狙い、怪我で退場させていたという事実があっても、コーチや選手から資格を剥奪しないのは米国らしいとも言えるが、わずか1年の資格停止では、抑制効果は薄いのではないだろうか。