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“怪我”を乗り越えた新三役・遠藤。
「忍んだ先」に笑顔はあるか? 

text by

佐藤祥子

佐藤祥子Shoko Sato

PROFILE

photograph byTamon Matsuzono

posted2018/05/12 11:00

“怪我”を乗り越えた新三役・遠藤。「忍んだ先」に笑顔はあるか?<Number Web> photograph by Tamon Matsuzono

その佇まいに風格が出てきた遠藤。さらなる躍進の先で、ふたたびの笑顔が見られることを多くのファンが願っている。

素っ気ないメディア対応が“記者泣かせ”に。

 そして'15年3月場所、5日目。

 順風満帆にも思えた遠藤は左膝前十字靱帯損傷、左膝外側半月板損傷の重傷を負った。

 手術を選択せず、ひたすら筋力の強化につとめ“自力”で回復させる道を選ぶ。この頃から、報道陣に笑顔を見せることが、日に日に少なくなってゆく。

 人気力士ゆえ、報道陣は常に遠藤の動向を追い、とり囲む。

 淡々とした素っ気ないほどの対応は、まさに“記者泣かせ”ともなった。一度、筆者はその理由を問うたことがある。視線を落とし、どこか憤りを押し殺したような口調で遠藤はぽつりと答えた。

「ある記事で、まったく違ったことを書かれていたんですよ。 ケガのことなんですけど……」

 遠藤本人にとって、力士人生を左右する大ケガだった。24時間365日、ときに労り、ときにいじめながらも、ストイックに懸命に向き合い、戦い続けていた“強敵”のケガだ。

 このとき、記事の内容に反論もせず詳細は言及しなかった遠藤だが、己のナーバスな領域に土足で踏み込まれたような思いもあったのだろう。

 発する言葉も、色紙にしたためる文字も、ひとつひとつの“言の葉”を大切に、丁寧に、真摯に紡ぐのが遠藤だ。

 リップサービスも大言壮語も、必要以上の謙遜もしない。語る言葉を、土俵上で「己の相撲」に変え、体現するだけだ――そう悟ったように思えた。

「8割戻りかけていた感覚がマイナスになってしまった」

 '15年10月のこと。先の大ケガも「8割は回復した」と思える矢先、巡業先で再び左膝を悪化させてしまう。

「あれが一番のターニングポイントというか……8割戻りかけていた感覚がマイナスになってしまった」(Number PLUS『疾風!大相撲』2017年4月)と述懐するように、患部をかばって逆に右足を痛め、'16年1月は途中休場、翌3月場所では十両に陥落する。

 一場所で幕内復帰するも、以来負け越し勝ち越しを繰り返す。そして昨年9月場所からは4場所連続の勝ち越しで、このたびやっと射止めた新三役の地位。

 この日までのケガとの戦いは、いつしか形を変えていた。

「うまくケガと付き合えるようになってきた」と、今、その苦渋の道程を振り返る。

【次ページ】 「遠藤関にとって相撲とは?」の質問に……。

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